彼が何を見て笑っているのかなんて知らなかった。いや知りたくなかった。きっかけというものはところかしこに散らばっていて、こしたんたんとおれの行く末を予測し、みきわめて、俺をどんぞこに叩き込もうと舌なめずりをしていた。それから逃げるのはたいへんだったけど、どうやらもうその必要はないらしい。といっても、いい意味ではなくて。

はじめから気をつけていればよかったんだと思う。はじめから、なんてめいうつとするならば、それこそおれとあいつがであったあのときから。彼が今なにをかんがえてどこをみていてなにをかんじたのか、逐次把握しなければいけなかったのだ。でも人のこころはもろくてもろくて、きたないから。潰れる前に、おれは、目をそむけた。その罰だ。

ヒロトが笑う、クスクスと。静かな空間にひびくそのこえは、きょうふしんを煽るにはじゅうぶんで、見事にあてられたおれはしりもちをついてぶざまに後退りするだけだ。このへやにいるのはおれとこいつだけで、きっとここに存在するのもおれとこいつの二人だけだ。きっと、多分、いやぜったい。

ヒロトが笑う、くすくすくすくすくすくすくすくす。きっかけなんてそこらかしこにちらばっていて、こしたんたんと狙うかれから、逃げることなど、おこがましかったのだろう。俺は逃げてたんじゃない、にがされていたんだ。





(ころしたいほどにあいしているの)

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