時間列的にはこれの続き



















時々彼の中での自分の立ち位置を見失うときがある。というのは俺の感覚だけで実際は立ち位置なんてものは存在しないし、きっと彼の中では変わらず俺の居場所は据えられているのだろう。彼は、優しいから。


「ね、土門」
「ん?」


いつからか土門の隣にいることが当たり前となった。嬉しいことも悲しいことも辛いことも苦しいことも全部全部、分かち合うのが普通となった。土門が悲しかったら俺も悲しくて、土門が嬉しかったら俺も嬉しい。逆もしかりなそれらは均等に二等分されてそれぞれに分配されているはずだが、それすら自惚れなのではないだろうか。


「俺が、」


俺が、もしも、


「死んでたら、どうする?」


あの時の事故で、というのは既に古い記憶だ。幼いながらにして正義感を発揮した結果の産物、一度目の別離。馬鹿なことをしたなという自覚はある。散々泣かせておいてという秋の言葉ももっともだ。
だから、その言葉に疑いを持つことは躊躇われた。しかし一度懐疑の念が生まれれば後はもう膨らむだけだった。とうとう抑えきれないこの腫物が破裂し、愚かしい質問となって口をつく。死んでたらどうする、なんて、優しい彼にはあんまりだ。


「どうする、て」
「あのとき死んだって言われて、悲しかった?」
「悲しかったっていうか、驚いた、驚いて、疑って、目の前が真っ暗になった」
「でも生きてた」
「ああ、嬉しかった、嬉しい」
「でもね、土門、たまに俺は、あのとき死んでたら、って考えるんだ」


望んでいたことだった。自分の弱っている姿を見せたくはなかった。必死になっている姿を見せたくはなかった。たとえ死んだと伝えられても、二人なら、土門なら、きっと俺が土門のもとにいくまで忘れないでいてくれて、また姿をあらわした俺を受け入れてくれると信じていたから。でももしも本当に死んでいたら。時を止めた俺という記憶の上に、彼は積み重ねていくのだろうか。ああそんな奴もいたな、なんていう存在に成り下がっていたのだろうか。望んだのは自分だというのに、俺は呆れるほどに我が儘だった。


「お前は、俺に」


またあんな思いをさせるのか。沈黙に落とされた土門の悲痛な声を聞いて、不謹慎なことに、俺の心は喜んでいた。微かに歪められた瞳からほろほろ、ほろほろ。浮かんでは静かに落ちる雫が、ちっぽけな憂いの芽を摘み取っていく。
自分の狡賢さに喝采を送りつつ、これで俺はまた彼と肩を並べられるのだった。






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かまってちゃんのせ
のせの前だと涙腺緩い土門だったら全私が萌えます



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