中学生男子の首というものは存外細い。そんなに大きくないはずの俺の掌でさえすっぽりと包むことができて、同時に少しでも力を込めれば簡単に締めることができる。今この手に力を込めたら、きっとこいつは死んでしまうだろう。ああなんてあっけない。簡単に死ねないくせに簡単に殺せるとはどういうことか。 「バーン」 「あ?」 「満足した?」 お前の命は俺が文字通り手中におさめているというのに、グランの瞳は相変わらず濁ったまま変わらない。少しも動揺の色を上塗りできない緑の水晶に舌打ちをして潔く手を離した。 「興ざめ」 「それは悪かったね、怖がったほうがよかったかい」 「冗談!そっちのがよっぽど気持ち悪ぃ」 もしもこの手でこいつの顔を歪めることができたら。きっと俺の心の中は優越感と喜びで満たされるだろう。そして計り知れないほどの虚無感に溺れ哀傷に悩まされるのだ。哀しみと歓びが手を取り合った先にきっと俺はいない。 「バーン」 「んだよ、っが」 「今度はこっちの番」 しなやかな動作でマウントポジションをとるグランの表情は相変わらず読めないままだ。無機質に沈む翡翠の淵に俺はうつれているのだろうか。ひたりと首に這わされた掌は氷のように冷たい。思わず肌が粟立ち、息を詰まらせた。じわじわと絞まってくると感じるのは俺の勘違いかそれとも。依然としてまわされる指に寄せる期待はやがて心地よい漣となり、俺はゆっくりと掌を重ねた。 -- 死にたがりBOY |