練習が終わった空き時間、2人だけの更衣室でヒロトが俺に好きだといった。でも俺は風介が好きだからごめんって言った。我ながら一刀両断だなと思ったがしょうがない、希望を持たせることがどんなに残酷か知っていたから。俺としてはそれでもう終わりだと思っていたから、早々に背中を向けた。それが悪かったのかもしれない。でもだって、好きだって言われてごめんって言えば、それだけで会話が成立して同時に友情も終了するんじゃないのか。少なくとも俺は自分に特別な感情を持っていて、それに答えられない相手とまた新たに友情を築くなんて器用な真似が出来るはずがない。でもヒロトはそれが出来るのかなんなのか知らないけど、逃げ暴れる俺の腕を掴んで乱暴に身体を床に叩きつけたのだった。


次に気づいたときは全裸でやたら広いベッドに転がされていた。ご丁寧に両手足縛り上げられて。がんがんと頭が痛かったからきっと殴られたんだろうなってぼんやり考えてたらいつのまにかヒロトが横にいて、「愛してる」って言いながら俺の頬を打った。ぐらぐらと頭が揺れて視界が回転しはじめて、きもちわるいからそのまま吐いた。ヒロトはそれでも「愛してる」って言っていた。だからさらに吐いた。もう胃の中は空っぽで胃液しか出なかった。吐き気と酸味と喉の痛みでえずいて転げまわる俺を見て、やっぱりヒロトは「愛してる」と呟いた。


また目が覚めたときも相変わらず全裸で両手足が不自由でベッドの上だった。相違点は身体にまとわりつくべたべたとした感覚とと乱れたシーツと股の違和感。少し身体を起こせば案の定っていうかなんていうか、俺の股を使って抜いてるヒロトがいた。吐き気は無い。残念なことだが俺の脳はこういった状況に慣れてしまっていた。麻痺してしまったというほうが近いか。俺の意識が無い間にずいぶんと出したのか体中に白濁色の液体が付着していた。言わずもがな、である。こすれすぎて股が痛い。ヒロトのちんこから吐き出される液体は既に透明に近くなっていて、それでも尚こすり付けてくるこいつをみて、盛りのついた猿の方がまだ加減を分かっていると心底侮蔑した。


もうどのくらいこのベッドの上に居るのだろうか。いい加減腰が痛い。寝返りを繰り返しても発散されることのないその痛みはきっと解放されることはない。ヒロトは「愛してるよ」って体中にキスをする。痩せ細っていく俺の薄い皮膚を強く吸って、自己満足を残していく。きっと首筋は見るもおぞましい状態になっていて、死の病の瘢痕にも見えるのだろう。そう、この瘢痕が全身に及んだとききっと俺は死ぬんだ。こいつの宛先の間違った愛によって。たまたま向けられたのが俺だった。故に俺は死ぬんだ。「愛してる」のその後に続く名前が俺ではないことには初めから気づいていた。ああ、風介にあいたいなあ。


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