「わたくしは、わたくしでしかないのです。わたくし以外にはなれないのです。わたくしとあなたの相違点はこの口角と身にまとう色だけにございますが、内面はその限りではございません。いくら外面ばかりが似か寄ろうとも、わたくしはあなたの心を垣間見ることすらできません。あなたの口調を真似しようとも、わたくしではあなたの言葉を紡げはしないのです。わかっております。わかっておるのです。しかしわたくしは、クダリ、あなたに成りたいのです。社交的で素直なクダリ。わたくしの自慢の弟。わたくしなど居なくなればよいのです。塞ぎこみ自分の意見を言えず台本をなぞるだけのわたくし。あなたが居ないと暗に溶け込んでしまうわたくしなど。わたくしがあなたを縛り付けているのです。やさしいあなたがわたくしを放っておけないことを知っての上で、わたくしは今この身を動かしているのです。自ら望んで足枷となりあなたを縛りつけ、あまつさえあなたになりたいなどと希うわたくしなど(滲んでいて読めない)ばよいのです。クダリ、クダリ、やさしい弟よ。あなたはきっと悲しんでくれるのでしょう。自分勝手なわたくしを、あなたはおやさしいから。しかし、囚われてはなりません。これはわたくしの罪なのです。罪を犯せば罰を受けねばならぬのが世の理にございます。やさしいあなたはきっとわたくしを許すでしょう。こんなわたくしをまだ兄と呼んでくれるのでしょう。あなたは、おやさしいから。だからこそわたくしは、わたくしで裁くのです。美しく純粋な愛されるべき我が弟よ。愚兄は、あなたをお慕いしておりました。決して、わたくしを許さないでくださいまし。けれど、嗚呼、どうか、また、あなたに(文章はここで途切れている)



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