「酔ってる?」
「ん〜?酔ってねえぞ」
「嘘だあ、顔真っ赤だぞシャンクス」
「そりゃあ髪の色がうつっちまったんだ」
「へえ」


じゃあこの胸元を弄る不躾な手はなんだというのか。軟派でおちゃらけたイメージが染み付いた彼は予想外に律儀で、今の今までキスすらくれたことがないというのに。おれだってもうオコサマじゃない、とねだった日には「まあいずれな」とわかりやすく拒絶を示した指先は、どんどんとシャツのボタンをはずしていく。動くたびに香るほろ苦い芳香が彼を浸すアルコールの海を物語っているのに、一向に認めようとしない。何が髪の色がうつっただ、ちくしょうめ。酒の力を借りないとこういうことできないんだって、おれ知ってるんだぞ、へたれやろー。胸中でどんな悪態をついても指先がその動きを止めることはない。心なしか先の行為へと急くような彼が最後のボタンをはずしたと同時に、悲鳴をあげるベッドに押し倒される。


「ぺどふぃりあ、幼児趣味。しょたこん」
「おいおいそんな言葉どこで覚えてきやがった」
「エースとサボが押し倒してくるおっさんはみんなそーゆーのだから逃げろって」
「おーおー言うねえ。で、逃げなくていいのか?」
「おう」


どうせ逃げたって追ってくるんだろ?とはいってやらない。
するりと腕から抜かれたシャツが床に落とされる。手首を捉える腕には力が入れられてないが、少しだって素振りを見せれば容赦なく押さえつけて離さないんだろう。まだ大人の面を被ってるお陰で隠れている、獰猛な獣の目。そして、それを剥がす方法をおれは知っている。んで、おれはそれを剥がしたいと思ってる。ぎらぎらと狙う瞳に身体を曝したいと考えるくらいには。Mなんかじゃないんだけどなあ、なんて。早く全てを奪われたいって思うのは、まああいゆえってことで。焦れたように落ちてくる唇に噛みついて、しっとりと濡れた首に腕を巻き付けた。



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