豆から挽かれたブラックコーヒーと甘やかな湯気を燻らすココア。赤と青のそれぞれのマグカップに注がれたそれは空中、おれたちの前で深く交わっている。深い芳香と眠たくなるような香りが鼻腔を擽るので、対で置かれた青のマグカップを引き寄せて口つけた。視界の端で赤色がおんなじように揺れたのをぼんやりと眺めながら傾ける、青。



「あっま」
「…にがい」



舌を滑る液体を喉に押しやり無意識にとめていた息を吐き出した。品のある甘味だ、とやつは言うけれど、やっぱりおれには合わないらしい。みやれば、やつの顔も苦々しくしかめられていた。きっとおれもあんな顔をしていたんだろう、なんて。くすくすと込み上げる笑いをそのままにしていればますますしかめられる眉。奥に潜む瞳が妖しく煌めいて思わずあっ、って呟いたころにはもう赤いマグカップはテーブルの上に居住まいを正していて。



「口直し」



触れた唇が甘い、なんて漫画だけだと思っていたけど、まさにその通り。掠めとる一瞬のふれあいは微かに苦かった。それが心地いいなんて、絶対に言ってやらないけど。







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