*4月の士官学校についての捏造あり



「級長たちを助けた傭兵の人を先生に、ですか。」

 入学したばかりの生徒たちに与えられた課題の最中に、盗賊たちに襲われた級長たちを傭兵団が助けてくれたと言う報告を受けた。その傭兵団はかつてセイロス騎士団長のジェラルドがいたらしく、知り合いだったアロイスさんが彼の娘を先生に推薦したそうな。そしてレア様がそれを許可したそうで。私は反対したんだが、とセテス様が不満げに言う。

「先ほど彼女が”青獅子の学級”を担任することが決まった。ルミナ君には暫くの間、彼女の補佐を頼みたい。」
「わかりました。」
「その間の通常業務と傭兵の仕事は減らしておくので、彼女とクラスの様子をしっかり見ておくように。それから、今節の終わりに三学級対抗の模擬戦を行うのでその準備も頼む。」

 彼女には明日紹介する、と言ってセテス様は去っていった。いやぁ、やることが多くなったなぁと思いながら仕事に戻る。過去の模擬戦の記録を出して、必要な物を準備しなくてはならない。そういえば新しい先生、女性なんだなぁ。ああ、寮の部屋も準備しなきゃ。





「ルミナ=ベルヒトです。士官学校の事務員をやってます。しばらくの間、補佐をさせていただきますね。」
「ベレス。教師なんて初めてだから迷惑かけると思うけど、よろしく。」

 次の日、待ち合わせた場所に行くと、見慣れない女性がいた。声をかけるとその人が新しい先生で、私や生徒たちとそう歳が変わらないように見えた。聞けばこの後は青獅子学級の教室に行くようで、教室に行くまでの間に学校内の主要な施設を案内する。温室、食堂等を案内すると、あっという間に教室についてしまった。他の施設は多分生徒たちが教えてくれるから大丈夫だろう。

「あの、ベレス先生。級長たち…ディミトリ様を助けてくださって、ありがとうございました。」
「そんな特別お礼を言われるようなことじゃないよ。」
 君は王国出身なのか?と聞かれたので、そうですと答える。
「ディミトリ様の元従者でした。ですから、本当に彼を守ってくれたことに感謝したいんです。聞けばドゥドゥーも側にいなかったそうだから、余計に心配だったので。」

 ディミトリ様の強さを不安に思うわけではないけど、万が一のこともある。こうして彼の元を離れた私が言えた義理でもないけど、歯がゆかった。

「ルミナがそれだけ彼を気にするのなら、きっと良い子なんだろう。なんだかうまくやってけそうで安心したよ。」
「そ、そうですか?なら良かったです。えと、普段はこの学校内のどこかで仕事してるはずなので、何かあったらいつでも声をかけてくださいね。」
「うん、ありがとう。」

 ベレス先生が教室内に入って行くのを見送る。少し会話を交わしただけだったけど、彼女ならきっと大丈夫だろうと漠然とした安心感があった。無表情ではあるけれど、心優しい人だ。セテス様の心配も、きっとすぐに晴れるだろう。いつまでもそこに立っているわけにもいかないので、早く仕事に戻らなければいけない。依怙贔屓するわけではないけど、ベレス先生と青獅子学級が模擬戦で勝ったら嬉しいなぁと思う。
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