セテス様から頂いた、来節から新たに入学する生徒たちの名簿を眺める。このガルグ=マク大修道院に併設される士官学校は、各地からさまざまな学生が集まる。将来領地を治めることになる貴族のご子息ご息女もいれば、王国の魔道学院から推薦をもらう人もいる。人数こそ多くはないが、平民出身の人もいる。それでも出身国で学級が分かれているから、表立った争い事はほとんどない。

 しかし今年はとんでもない年になりそうだ。次期皇帝、次期国王、次期盟主。奇しくも次代を担う人材が一堂に会することは、もう一生ないのではないか。
 そういえばロドリグ様からの手紙にも書いてあったように、ディミトリ様はもちろん、フラルダリウス、ゴーティエ、ガラテアの嫡子の方々もご入学なされる。今年は格段と忙しくなりそうだなと、ため息をつく。手紙には、ディミトリ様含め、彼ら4人に対して一個人として扱ってもらいたいと書かれていた。嘘だろ〜、と思った。
 一応幼馴染という枠組みには入れてもらっているが、私自身は小さな島を治める田舎貴族の紋章を持たない娘だ。家は兄が継ぎ、私は先王ランベール様との盟約によりディミトリ様の従者として島をでた。紋章を持つ彼らはいずれファーガスの領地を治めることとなる。主人という身分の彼らに対して一個人として扱うのは居心地が悪すぎる。昔のように名前を呼び捨てに出来ていた頃の私とは違う。馬鹿だった私は学んだのだ。当時私を見かねてみっちりと主従関係を教えてくれたメイド長は元気にしてるだろうか。そういえばそれから口調も呼び方も変えたときに、彼らはとても不満そうにしていたなぁ。

 ダスカーの一件からもう4年、彼らはどう成長したのか。会いたい気持ちと、会うのが恐い気持ちでまたため息が出てしまう。もう来節には顔を合わせるのだから気を引き締めておかないといけない。

 チャイムの音がなる。重い腰を上げて、来節に向けて増えた仕事を片付けねば。
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