*軍師主




「ここにいましたか、名前さん」
「マシュー」

オスティア城の書庫で戦術書を漁っていたらランタンを持ったマシューがやってきた。

「暗いところで読むのは良くないですよ」
「その場で読んでいたらどんどんランタンから離れていってた」
「気をつけてくださいよ、今名前さんに倒れられたら困るんですから」

うん、と返事を返すとそのまま気まずい沈黙が流れた。
ウーゼル様の訃報はオスティアの人間だけに限らず、私たちの軍の士気にも少なからず影響が出た。ヘクトル様はもちろん、エリウッド様の精神状態も気になる。悪いことというのはいつだって不条理に、連続で襲いかかるものだ。

「理に縛られる以上人の死というのはいつだってやってくる」
「…」
「それはいつだって不条理に、まるで遺された者達の前に現れる試練のように」

レイラさんの死だって、いまだに軍の中で燻っている。仇と共に行軍するマシューの心中は計り知れないし、私には理解することはできない。

「だけど遺された者の行動次第で人の死は無駄にはならない、と思うよ。勝手な持論だけどね」
「…レイラの死も、ですか?」
「少なくとも黒い牙に対する復讐心はマシューの原動力になったでしょう。でも、マシューの刃はジャファルを傷付けることなく終わった。それはマシューの成長、というか心の変化でしょう」

だからウーゼル様の死も無駄にしてはいけない。

「今は哀しんでいてもいい、何も考えなくていい。そのために、私が明日からの行軍に支障がないように動くのが軍師の仕事だからね」
「、俺も手伝います」
「マシューも休んでて。さっきまでオズインさんと一緒に政務周りのことやってたんでしょ」
「…ありがとな、名前さん」

背を向けて書庫から出ていくマシューの後ろ姿をランタンの灯が消えるまで見送った。











リハビリ案件
軍師主のキャラ造形は出来ていても原作沿いが書けないのでとりあえず短編に
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