東の大魔女と魔法とフィガロ


東の大魔女


「その手の魔法なら名前が得意だよ、今度見せてもらおうか」




「…で、私に依頼というわけ」
「うん、だって君の一番得意な分野じゃないか。若い子たちの後学のためにも見せてやってよ」
「あなた本当に猫被るのが上手になったわよね」

 フィガロの後ろにいるミチルが緊張した顔でこちらを見ている。レノックスはともかく、ルチルとミチルのいる前で話すことではないと少し声を潜める。昔のフィガロなんて、そりゃ酷かった。北の魔法使い、かつて世界の半分を支配した魔王の右腕、善性の仮面を被った倫理のない男。悪口なんていくらでも湧いてきてしまう。

「ひどいなぁ、今の俺は南の魔法使いフィガロだって前々から言ってるじゃないか」
「何度も殺されかけた身としては信じられないわ」
「まぁまぁ、ここは俺の顔を立てると思って、頼むよ」
「…はぁ〜〜〜、今度あなたが隠してるモンテスマの蜂蜜酒ちょうだいね」

 瘴気で淀んだ土地の浄化はイメージすることが大事だ。集中力とイメージと、魔力のコントロール。それが揃って初めて浄化魔法は成立する。

《メルヴェサイヤ》

 呪文がトリガーとなって魔法が放たれる。少しづつ消えていく瘴気にホッとした。

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