家入硝子と先輩と理想の死に方について


ネタの設定



「私さぁ、最期は戦って死にたいんだよねぇ」

 馴染みの居酒屋で、硝子と二人で飲んでいた。五条も行きたいと駄々をこねていたが、酒に弱い男を誘う気分でもなかった。たまには二人で飲ませてくれと言うと、むすりとしていた。
 アルコールもほどほどに回ってきたからだろうか、つい声に出していた。多分硝子だけだからだろうなとも思う。

「珍しいですね、名前先輩がそんなこと言うの」
「うーん、最近任務が多いから最期を考えたいのかも」

 呪術師がまともな死を迎えることはない。ずっと言い聞かされて、事実私もまともに死ねないだろうとは思っているけども、ここ最近の任務の中には明らかに階級に見合わない任務も含まれている。それが積み重なって些細なミスで死ぬのかもしれないとも思い始めた。

「どうせ死ぬなら強い呪霊と戦って、差し違えてから死にたいなって」
「せめて勝ってから死ぬと言わないのが名前先輩らしいですね」

 笑いながらビールを飲む。多分勝ち負けとかは関係ないのだ。自分の全てを出し切って戦えたら、とても幸福な終わりだ。

「死体も、身元が判らないくらいぐちゃぐちゃになってほしいんだよなぁ」
「え、それは駄目です」

 まさかのダメ出しについ硝子の顔を見てしまった。あまり顔には出ないが、酔っているなと思った。

「名前先輩の遺体は私が調べるんですから、傷だらけで死なないでくださいよ」

 まさかの死後の死体の扱いについてのダメ出しとは思ってもいなかったが、硝子らしい理由だと思う。そして、硝子になら死体を預けていいと思った。

「はは、なんだそれ。無茶して死ねないじゃん」


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