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「その、気持ちは本当なのか」

「はい。ずっと、そして今も…伊黒さんをお慕いしております」

「っ、」


いつもは羽月が目を逸らすと言うのに、今日ばかりは俺が目を逸らしてしまった。

熱を生んだ視線にこれ以上見つめられては理性を手放しかねない。


何故突然こんな風に話し始めたのだと理由を探ると、すぐに羽月が口にしていた湯呑みに視線が行った。


「…い、伊黒さん」

「それ以上近寄るな」

「っ、」

「近寄られると、抑えきれなくなる」


伸ばされかけた手に視線を投げ掛けながら、膝の上に置いたままの拳をより一層強く握る。

好いた女がいつもあんな調子だった理由が自分に想いを寄せていたからだと、そんな風に言われたらたまったものではない。


今でさえ、この手が羽月の身体を抱き寄せてしまいそうだと言うのに。


「……抑えなくて、いいです」

「羽月、」

「伊黒さんに触れて欲しい」

「後悔、するなよ」


風に舞う花の様に微笑む羽月を抱き寄せ、至近距離で視線を交わらせる。

受け入れる様にゆっくりと瞼を下ろしたのを合図に口布をずらして薄い唇を奪う。

小鳥の様な口付けから、徐々に深くしていくと拒絶する訳でもなくただ首の後ろに回された腕がすがりつく様に力を込める。

息を荒げ、口付けながら優しく押し倒すと羽月
の美しい髪が扇状に床へ散らばった。


「好きだ、羽月」

「わ、私…も…」

「辛かったら言え」


絡まった指先に理性など既に飛ばした俺は羽月に覆い被さる。

初めて触れた羽月の肌は柔く、良い香りがした。

果てても果てても一生懸命に俺へ答えようとするその姿に何度も欲情し、愛を注ぐ。


羽月が気絶する形で終わった行為後、生まれたままの姿で抱き合いながら一時の休息を済ませる。

次に目を覚した頃には日も傾き、辺りは橙に染まりつつあった。


「…羽月」

「ん、」

「そろそろ起きろ」


腕の中で眠る羽月の瞼に唇を落としながら声を掛ければ、身を捩りながら掠れた声を返される。

そんな声も愛らしい、そう思いながら枕代わりにしていた腕を抜き仰向けに寝る恋人へ覆い被さった。

俺とてまだ21の男だ。
体力は勿論だが、そっちの気も恋人が出来たのならそれ相応の欲はある。


「起きねばこのまま襲ってやろう」

「ひぇ…っ!」

「何だ、起きたか」

「い、いいいい、伊黒、さん!?」

「あぁ」


流石に飛び起きた羽月を見ながら俺も身体を起こす。
互いに何も身に纏っていない状態だが、目の前のこいつはそれを分かっているのだろうか。

所々に散りばめた印を眺めながら夕陽に照らされる身体も良いものだと内心頷く。


「なん、っ、何で伊黒さんが、えっ!?」

「俺が居ては不都合でもあるのか」

「だ、っ…は、裸っ…!」

「気付いていないようだから教えてやるがそれはお前もだ」


俺の裸に驚いているのか、そう思いながら尻餅をつきながら後退る羽月の姿に再び情欲が沸き上がる。


「っ、ひ…!」

「どうした?」


慌てながら自分の身体を両手で隠したが、太腿を伝ったものに驚いたのか背を仰け反らせた様子に笑みが浮かぶ。

覚えていないのか、それとも混乱しているのか。

どちらにせよ、手に入れた羽月を手放すつもりなどない。

こんなにも欲しくて仕方が無かった誕生日の贈りモノを覚えていないのならと諦めるほど俺は優しくなどないのだから。


「恋仲になった事を忘れたとは言わせん」

「こ、こここっ!?」

「証が此処を伝っているだろう」

「ひ、ぁ…っ」

「今日はいい日だ」


太腿を撫で上げ、抱き上げると反射的に俺の首に手を回す羽月へ出来る限り優しく口付けた。

最初こそ身を固くしたものの、何度も角度を変えて愛情を示せばおずおずと返してくれる。


「い、ぐろさ…」

「あぁ」

「か、かっこ良すぎて、私…どうにかなってしまいそう、です」

「ならどうにかなればいい」


もう一度布団へ羽月を沈めて首筋に吸い付く。

胡蝶には礼を言わねばならないな。
目の前で俺に溺れていく羽月を見ながらそう思った。


「ぁ、あっ…」

「早く慣れろ」

「…、む、むり…!」


その前にもう少し躾をしなくてはならないな。

夕陽よりも赤く染まった羽月を見下ろしながら襖を閉めた。





終わる。


伊黒さん誕生日おめでとうございます…!

裏書いてあげたかったけどそれはまた別の機会と言うことで微裏にしました()

金木犀の花言葉は"真実"です。

胡蝶さんのくれた薬は自白剤。
あるあるですが、書いたのは初めてなので許して下さい!!!!

Happy Birthday 小芭内さん!!!
君が大好きだ!!




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