※夢主ちゃん義勇さんと付き合ってない。そしてご都合血鬼術で幼女化してます。


「あ!不死川さま!」

「……………………」

「あのー、困ってるので助けてもらっても?」


私は今非常に困っていた。
たまたま冨岡さんとは別で任務に赴いていたのだけど、何やら身体を小さくする毒を扱う鬼だったらしくそれを吸ってしまった私は頸を落とした後、小さくなっていく身体で必死に隊服を引き摺ってここまで帰ってきた。

帰ってきたはいいけれど、体力がもう限界に近い。
けれど記憶や思考は私のままみたいなのは助かった。

見かけた事のある背中へ飛び付き、助けを求める。


「……え、不死川さま?」

「テメェ誰だァ」

「月陽です。鬼殺隊の!」

「アイツはこんなチビじゃねぇだろォ」

「そこはもう考えるの無しにしてもらえませんかね」


私だって好きでこんな小さくなってる訳ではないので。
と言うか察しのいい不死川様なら私だって事は気づいているんだろうけど脳がそれを拒んでるってところなのだろうか。

どうしたものかと不死川様の背中に飛び乗ったまま考えていると、何故か周りが騒がしくなった気がする。


「っ、オイ!行くぞ!」

「ひゃぁ!?」


子どもを拐ってきたのかしら、なんて言葉が聞こえた瞬間荒々しい動きで私の身体を引っ掴んだ不死川様が意外にも優しく抱き抱えてくれてこの場から逃げ出すように走り出した。

あ、なるほど。察した。


「すみません不死川さま。人さらいだと思われたようで」

「っざけんなよ…!」

「たいへん申し訳なくおもっておりますとも」

「クソがァ…」


私を抱き連れて藤の家に駆け込んだ不死川様は肩で息をしながら座敷の上にポイッと投げられた。
因みにポイッとはされたけれどとても優しい。


「隊服もおおきいので何かお借りできませんでしょうか」

「聞いてきてやるから待ってろ!」

「はい」


ドスドスと大きな足音を立てながら襖を占めていった不死川様を見送って、自分の小さくなった手を見る。
今の私は6歳くらいと行ったところだろうか。
しかし当時は当たり前と思っていたけれど、大きくなってから小さくなるのとでは世界が全く違うように見える。

この部屋も、いつもの私なら違和感なく過ごせただろうけど今の背丈では何もかもが大きい。


「十近く幼くなるなんて凄いなぁ」


珠世さんに言えばきっとすぐに治せるのだろうけれど、今の私に連絡手段はない。
かー君は冨岡さんに連絡する為飛ばしてしまったから今の自分にできる事と言えば服を取りに行ってくれた不死川様を待つ事だけ。

大きくて仕方が無い隊服を脱ぎ、シャツだけとなった私は見苦しくないよう羽織を上から被る。

これなら怒られないだろう。

また聞こえてきた足音に正座をして姿勢を正す。


「入るぞォ!」

「どうぞ」

「………ほら、この屋敷の奴から借りた。さっさと着ろ」


ちょんと座る私に目をやると頭を掻きながら背中を向けて襖の外で待ってくれるようだ。
精神的には通常の私と変わらないのでその配慮に感謝しながら可愛らしい着物に袖を通す。

まぁピッタリ。


「不死川さま」


着替えの終わった私が名前を呼べば静かに開かれた襖の向こうから何とまぁ不機嫌そうな不死川様が顔を出す。
とても不甲斐ない。


「ありがとうございます」

「おぉ」

「とてもピッタリで驚きました」


久し振りに可愛らしい着物に袖を通したのでくるりと一回転しながら不死川様へ見せると何やら複雑そうな顔で私を見ている。

そう言えば、不死川様には亡くなられた弟や妹が居たんだった。
年の近い弟さんは生きてらっしゃると聞いたけれど。


「あの、ここまで運んで頂ければだいじょうぶですので…お忙しいところ申し訳ありません」

「構わねェよ。こっちこい、裾がズレてる」

「え、あ…ほんとだ」


さっきまでの態度はどこへやら。
何故か突然世話を焼いてくれる不死川様に甘えて裾を直してもらう。


「ったく、曲がりなりにもテメェは柱候補だろうが。何やってンだァ」

「はは…ぐぅの音もでません」

「しかし顔は変わらねぇな」


頬に土でもついていたのか、いつもよりふっくらした私のそこを親指で拭ってくれる。
優しいなぁと思うけどそれを口に出したら怒られる気がしたのであえて黙っておいた。

しかし慣れない身体だからか、疲労が今更になってやって来る。

不死川様の前に両足を伸ばして座ると眠気が襲ってきて失礼を承知で1つお願いをしてみることにした。


「あの、不死川さま」

「ンだよ」

「だっこ」

「………ハァ!?」


あれ、間違った。
少し休んでもいいかと聞こうと思ってたのに、自分の口から出た言葉はただの子どものおねだりだ。

顔から火が出そうなほど恥ずかしいはずなのに眠気のせいか退行してる頭は回らず重い瞼がどんどんと下がってきてしまう。


「…ねむ、い」

「おい!」

「んん…」


自然と身体は不死川様の胸元に寄り添い、人肌を感じれば睡魔に負けるのはあっという間だった。
優しいお日様のような香りのする不死川様の腕の中にすっぽりと収まった私は欲に負けて瞼を閉じる。

あったかいなぁ。