※完全ifのオリジナルストーリーです。年齢操作あり



鬼舞辻無惨を倒した私達は、まるで子供に戻ったかのように残り少ない日々をそれぞれに過ごした。


「行きますよ、不死川様!うぉりゃぁあ!!」

「甘いんだよオラァ!!」

「ぎゃー!小芭内さん!取って取ってー!」

「任せろ。不甲斐ない投手なのは既に予測済みだ」


不死川様と小芭内さんと野球したり、


「だーるーまーさーんーがー」

「……っ、」

「転んだ!!」

「!?」

「はい、義勇さん動きました!」


だるまさんが転んだをしたり。

いい年して、子どものような遊びをした。

それはもう全力で。


「蜜璃さん、誕生日おめでとうございます!」

「えっ!?」

「行きますよ、月陽さん」

「はい!」

「きゃー!嬉しいわ!」


蜜璃さんの誕生日にはしのぶさんと突然お家にお邪魔して手作りのお花を辺り一杯に散らせてお祝いした。


「悲鳴嶼様、写経って難しい漢字ばかりですね…!」

「僕もう足が痺れたよ月陽」

「うむ…もう少しだ」


悲鳴嶼様の所では写経をさせてもらって、無一郎と文字の練習もした。
毎日が楽しくて、時間が過ぎていくのが早かった。


「愈史郎君、見て見て!」

「うわっ、お前なんて物生み出してるんだ!早く捨てろ!」

「うっ、臭っ!」


愈史郎君とお薬の勉強もした。
大切な人を失った時から鬼を倒す為の事以外して来なかった私達だから。
残りの時間は出来なかった事をしていたかった。


「………たのしかったなぁ」


今、私は布団の上に居る。

楽しい日々が通り過ぎて行くのが早いように、周りの人達も次々と天国へ行ってしまった。

痣が出た者は、25歳が近付くにつれて動けなくなっていく。
最初は悲鳴嶼様だった。
写経を教えてもらったその翌週には、永い眠りについてしまった。


「…今度は、今度こそは…鬼の居ない世界で、普通の、周りの子と同じ様に、遊べたらいい…な」


呼吸が浅くなるにつれ視界が滲む。
ふと目の前に何人かの影が見えて私は微笑んだ。


「あぁ、迎えに、きて…くれたんですね…」


ふふ、と微笑んだ私は目の前に差し出された手を掴んで深い深い眠りについた。










「せんせ…おもちゃとられた…」

「おい、お前は先生とはなしたいだけだろう。そうはさせんぞ」

「こらこら、皆。仲良くしようね?」


生まれ変わった私は前世の記憶を持っていた。
けれど、直ぐに会えたのは家族と愈史郎君だけ。

愈史郎君にだって会ったのは大学だった。

クラスも一緒で、勤め先の保育園も一緒だったから驚いたけど嬉しさのが勝って二人でお祝いした。
それに愈史郎君も鬼では無く人間になっている。


「愈史郎君、ちょっと手伝ってー!」

「お前の仕事だ、精々しっかりやれ」

「酷い!」

「俺は珠世ちゃんの世話で忙しい」

「ロリコンめ…」

「何か言ったか?」

「何でもありません!」


けれど、就職先であるこの保育園で私は幸せな事が起こったのだ。

起こった、と言うよりは現在進行系だけれど。
私のエプロンを引っ張る小さな手を取れば、幼い義勇さんと小芭内さんがこっちを見る。

ほら、不思議でしょ?
出会えなかった皆が、今ここに居るんだ。
可愛い園児として、先生として。


「義勇君、小芭内君。先生これからやる事があるから少しだけ待てるかな?」

「………やだ」

「おれより大切な用事だと?」

「ふふっ」


生まれ変わって記憶が無い二人だから何も言わないけど、変わってないなぁなんて思うとどうしても笑いがこみ上げて来る。


「なぁ、月陽って愈史郎と付き合ってんのか?」

「…天元君、どこからそんな言葉を覚えてくるのかな?」

「派手に吐いちまいな!」

「もー!違うってば!」


滑り台の上でムン、と腰に手を当てた宇髄様はまだ小さいけれどやっぱり派手好きに変わりはない。
それを下から見てるもちもちのほっぺたを赤く染めた雛鶴さんもまきをさんも須磨さんも、背丈や容姿が幼いだけで何も変わらない。


「なぁ、母ちゃんはまだむかえにこねぇのかァ」

「実弥君。もう少しで来ると思うよ」

「玄弥がさみしいって泣いてんだ」

「にいちゃん…」

「大丈夫だよ、きっと実弥君と遊んでたらあっという間に迎えの時間になるから」


周りを見渡せば、蜜璃さんもしのぶさんも居る。
炭治郎達はこの前中学生の職業体験でここに来てくれた。

ずっと会いたいと願っていた人達がここには居る。


「…月陽せんせい、どうした?はらでもいたいのか」

「え?」

「はらが痛いならばさすってやらんこともない」

「…ないてる」


小さな義勇さんは、私の頬に触れて悲しそうに眉を下げた。
小芭内さんは必死にお腹が痛いのかと撫でながら私を心配そうに気遣ってくれる。


『月陽、俺はお前を守りたい』

『辛くなったらいつでも来ればいい。話しくらいは聞いてやる』


昔聞いた義勇さんと小芭内さんの言葉。
小さな手を涙が通り過ぎていくのを見ながら、やっと自分が泣いている事に気付いた。

今の私は義勇さん達より歳上なのに。
何なら勤務中だと言うのに。


「あらあら、だめじゃないですか。わたしがちりょうしてあげましょうか?」

「しのぶちゃん…」

「わ、わたしもなにかできる事があるならしたいわ!」

「蜜璃ちゃん」


お医者さんセットを持ったしのぶさんと、さっき食べたおやつのカスをお口につけたままの蜜璃さんが駆け寄って来る。

その姿が昔の二人と重なり、私は止まらない涙をそのままにゆるりと微笑んだ。


「ごめんね皆。私は大丈夫だよ」

「あれ、月陽泣いてるの?」

「無一郎、先生」

「どうしたの、疲れちゃった?」


私の周りに集まった子供達を見て来てくれたのか、今世では年上の無一郎が柔らかく微笑みながら目線を合わせてくれる。

私が会いたかった人達が、今ここに居る。


「ううん、違うよ。嬉しくって」


ずっと、ずっと会いたかったから。
こうして年の差はあっても、皆に会えたことがとても嬉しかった。