「鬼殺隊の皆さん、おはようございます」 丸めた新聞紙を持ち、私は何処かへ向かって話し掛けた。 大人の都合でそこは言えないけれど、共に過ごしている義勇さんの部屋へ抜き足差し足忍び足と向かっている最中だ。 何故こんな事をしているのか? お館様が可愛い子どもたちの寝顔が見たいと言っていたからです。 写真というものを撮るため、今日から私は柱の寝顔寝相を撮る任務を与えられている。 柱の寝顔とか絶対撮れないと思ってはいるけれど、とりあえず寝起きを撮れたらそれでいい。 ぶっちゃけ宇髄様と悲鳴嶼様辺り絶対撮れない。 そこはもう撮れない自信しかないので、その内助っ人を誰かにお願いして撮りに行こうと思う。 「さて、まずは一番私に気を許してくれているであろう義勇さんの寝起きドッキリです。いってきまーす」 小声でぼそぼそ喋りながら静かに義勇さんの部屋の襖を開ける。 穏やかな寝息が聞こえるから恐らくセーフ。 ゆっくり近寄れば布団を抱き枕に美しい脚を曝け出す義勇さんの姿が。 (美女かよ) 髪も解いているお陰で顔だけ見れば美人さんが寝ているように見える。 程よくついた筋肉を見なければ。 全体の写真を一枚撮り、別のアングルから撮ろうと真上からカメラを構えもう一枚。 (この写真私も欲しい) 私と寝ていない時の義勇さんは寝相が悪いのか、凄く寝間着が乱れている。 肩と胸板が出ててとてもイヤらしいのだけど、こんなのお館様に見せて大丈夫なのだろうかと心配になってきた。 (さて、ドッキリしてもらいましょう) 胸元から取り出した猫じゃらしを手に義勇さんの側に座り、写真を構える。 最初は優しく、そっと猫じゃらしで首を撫でてみた。 「………ん」 (起きない) 次に耳元を擽ってみる。 「……っ、ん」 (……ヒェッ、色っぽい!) 擽ったいのか、耳元にある猫じゃらしを弾かれ段々と楽しくなってきた私は曝け出された胸元へ手を持っていく。 胸筋の間を撫で、腹筋辺りまでを何度か往復すれば義勇さんの身体がひくりと反応した。 「ん、っ…」 (やばい変なスイッチ入りそう。ここで全年齢向けに戻さなきゃ!) 「………はっ、ぁ…」 「……おはぎぃ!!!」 「!!??!」 最終兵器おはぎ。 いやらしくなりそうだったので、どうにかこうにか不死川様に試そうとしていたおはぎを義勇さんの顔面に叩きつけた。 勿体無いからきちんと口の中に入るようにだけど。 私の大声とおはぎが詰め込まれる感覚に飛び起きた義勇さんの顔をすかさず写真に収めて、にっこりと笑みを浮かべた。 「ドッキリ大成功ー!!」 「………ほっひひ?(ドッキリ?)」 「おはようございます、義勇さん。寝間着殆ど無意味になってますよ」 飛び起きた反動なのか、殆ど脱げた状態で目を白黒させながらおはぎを咀嚼する義勇さんの口元についた餡子を食べながら寝間着を指差す。 もっちもっちと可愛らしい音が暫く響いて飲み込む音が聞こえる。 どんな反応が帰ってくるのかちょっとおっかなびっくり待っていれば寝起きだからか目の座った義勇さんが私に手を伸ばしてきた。 「うっ、わぁ!!」 「…………」 「いやいや、何か言ってくださいよ!」 腕を掴まれ布団に押し倒した義勇さんは私を見つめたまま無言で首筋に顔を寄せてくる。 はだけまくった義勇さんは鬱陶しいというように辛うじて引っ掛かっていた寝間着の袖を脱ぐと、私の頬に手を這わせ首筋へとゆっくり移動させていく。 待ってこれやばくないか。 「待って!義勇さん!これお館様に頼まれてやっただけですから!」 「……お館様?」 「そうそう!私の可愛い子どもたちの寝顔写真が欲しい。って言われたからやっただけであって…」 「写真を撮ってきてくれと言われただけか」 「はい!!」 寝起きで掠れた声の義勇さんに首が飛ぶほど縦に降れば少し考えたように辺りを見渡した。 そこには私がさっきまで使っていた撮影機と猫じゃらしがある。 「それもか」 「いや、それは私が考えて昨日の昼間取ってきましたね」 「………」 「あれ、墓穴掘った?」 おもむろに猫じゃらしを掴んだ義勇さんがふりふりとそれを左右に振って見せてくる。 勿論お顔は無表情のまま。 「…ご、ゴメンナサイ」 「覚悟しろ」 「ぎゃー!!スケベ反対!!」 結局その後義勇さんからお仕置きを受け、へとへとになりながら撮影したものをお館様の元へ届けた。 「義勇は可愛い顔して寝ているね」 「……はい。あの、お館様」 「次も楽しみにしているよ、月陽」 「うっ、承知しました…」 満足そうなお館様の顔と声に断れないまま撮影機を持って本拠地から出ていく。 さて、次は誰を撮ろうか。 挫けそうな心のまま青々と輝く空を見上げた。 冨岡ドッキリend. ←→ |