「壱ノ型 睦月」


炭治郎を探す為に空間把握したけど、頭の中に見えた景色に私は口角が引き攣った。

鬼は全部で6体程居る。
5体はほぼ同じ形状ではあるから分身する血鬼術を使う鬼なのか、一体は壺の形をしていたし近くには無一郎が居るようだった。


「何だかよく分からない気配の子も居るし、急がなきゃ」


既に跡形もなくなった宿から飛び降り炭治郎達の元へ走れば、不死川様の弟が炭治郎の首を掴んでいる所に出会した。

その瞳と八重歯はまるで鬼のそれだ。


「炭治郎!」

「あっ、月陽さん!」

「柱になるのは俺だ!!!」

「…こら、炭治郎に何してるの」


炭治郎に向かって叫び涎を垂らす不死川様の弟の頭を小突いて首を掴む腕を振り払う。
涎は出ているけれど、炭治郎を食べようとしている様子は無い。

随分と興奮した様子だけど、まるで何かに取り憑かれたように柱になりたいと言っていた。


「テメェ…邪魔すんな!」

「仲間同士の揉め事は御法度だよ。柱になりたいのならそれくらい記憶に留めておきなさい」

「鬼殺隊でも無いテメェが偉そうに…」

「玄弥、月陽さんは柱と同等だよ。今は鬼殺隊に居ないけど、この人は俺達より確実に強い!安心していいぞ!」


標的を私に変えたらしい玄弥は更に炭治郎に止められ曇りなき眼に言葉を失っている。
あの目に見つめられたら何も言えなくなるだろう。

どうやら落ち着いた様子に私はため息を付いて刀を抜く。


「炭治郎、状況を教えて」


降り注ぐ雷を避け炭治郎へと近寄る。
随分と怪我をしているようだけれど、まだ戦えそうな姿に少し安心した。


「今俺達は上弦の肆と戦ってます!喜怒哀楽と四人の鬼が居て、舌が弱点です。本体はもう一人居るんですけど…」

「頸は斬っても仕方が無いって事だね。本体は探せそう?」

「えっと…」

「集中して。攻撃は私が出来る限り引きつける」


鼻を鳴らして匂いを嗅ぎとる炭治郎の邪魔をさせないよう、姿が見えない鬼からの攻撃を私に集中させる為高く飛び上がり大きな葉を持った鬼へ斬りかかる。


「!」


鬼が葉を振った瞬間強風が吹き荒れ吹き飛ばされそうになるのを刀を地面に刺すことで耐える。
随分と厄介な武器も使う鬼だと思いながら、攻撃のスキを伺った。


「禰豆子!瓦礫の上!」


風を避けた禰豆子に指示を出し少しずつ弱まってきた瞬間、炭治郎が飛び出したのを見て私も同じ様に瓦礫へ向かう。

錫杖を持った鬼は炭治郎がどうにかしてくれると見て、翼を持つ鬼へ技を放つ。


「漆ノ型 文月」


刀を振り下ろして翼を切り放し、そのまま舌を横薙ぎに斬ってやる。
行動力を失った鬼は落ちていき、次に私は葉を持つ鬼の背後へ移動した。


「炭治郎!」


先に葉を持った鬼に辿り着いた炭治郎が術によって強く地面に叩きつけられ、歯を食いしばりながら右手と葉、そして舌を同時に斬る。


「玄弥ーっ!右側だ、南に移動してる!探してくれ!!」


血を吐きながら玄弥へ鬼の居場所を知らせる炭治郎を支え起こして私達もそちらへ向かう。


「月陽さん!俺はいいから玄弥を!」

「分かった」


そう言った炭治郎に頷いて玄弥の背後にいつの間にか迫っている鬼の頸を勢い良く飛ばす。
大振りになってしまったと顔を上げた瞬間、玄弥へと檄を飛ばす炭治郎のすぐ後ろに鬼を見かけた。


「炭治郎、後ろ!」


そう叫んだ時、近くにいた筈の玄弥が飛び出す。
目の前にあるその光景に私は思わず息を呑み刀を握り締める。

体の所々に穴が開き、血を滴らせる玄弥の姿。


「行け」

「玄弥!!」

「俺じゃ斬れない。お前とあの女で斬れ。今回だけはお前達に譲る」

「炭治郎、私が援護する!」


きっと彼も炭治郎の真っ直ぐな心に何か思う事があったのだろう。
鬼の本体は小さく私にはなかなか見つけられない。

とすれば炭治郎が探すのが一番だ。

銃を使って援護する玄弥と共に炭治郎へ襲い掛かる楽の鬼の頸を刎ね飛ばす。

いや、刎ね飛ばす筈だった。

もうすぐで頸を飛ばすと思った所で、楽の鬼は何かに引き寄せられるよう飛んでいき私の一閃は空振りに終わってしまったのだ。

後ろを振り向けば二体の鬼を吸収し、更には哀と書かれた鬼が瞬く間に吸収されていく。

そうして三体を吸収した怒りの鬼はまるで雷神の子のような姿になった。


「玄弥、離れて!」


横を通り過ぎていった禰豆子に気付き、嫌な予感がした私は玄弥の隊服を引っ張る。

そのすぐ後木の幹で出来た竜が炭治郎を襲った。

何とか禰豆子が炭治郎を庇ったのを見て、私はその鬼の背中を睨み付ける。


「不快、不愉快、極まれり。極悪人共めが」


本体を庇うように木で囲い始める鬼を見ながら、横目で動きの止まった玄弥を見た。







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