※甘露寺視点


月陽ちゃんはとっても可愛い子だなって思ったの。
冨岡さんもね、月陽ちゃんと居るととっても幸せそうでそんな二人を見て胸が高鳴ったわ。


「義勇さん!」

「あぁ」


いつもひとりぼっちだった冨岡さんが、月陽ちゃんと一緒になって他の人達ともお話するようになったし、何よりとっても優しい目をしてるの。

それはきっと、他の女の子じゃ出来なかった事。

笑顔が可愛くって、強くて、心の優しい女の子。


「お菓子だ!いいんですか!」

「構わないからやったんだ。いちいち鼻息を荒くするな。落ち着いて食え」

「はい!静かに食べます、ありがとうございます!」


伊黒さんもね、月陽ちゃんと居るととても嬉しそうなの。
私にも優しくしてくださる伊黒さんだけど、月陽ちゃんを見つめる目が他の子や私を見ている時と違うのよ。


「蜜璃さん、差し入れです!」


嬉しかった。
私のこの体質もさも当たり前のように受け入れて、たくさん美味しいお菓子をくれたわ。

みんな、皆月陽ちゃんを色々な形で大好きなんだわって思った。


だけど、ある日を境に月陽ちゃんはまるで元から存在していなかったかのように消えてしまった。

柱合会議で月陽ちゃんの行方を探す為に話し合った時、なかなか声を荒げたりしない伊黒さんが、人に余り興味を示さない無一郎君が冨岡さんに凄い勢いで迫っていたの。


「…月陽ちゃん、どこに行ったのかしら」

「大丈夫ですよ、甘露寺さん。月陽さんなら絶対また元気な顔を見せてくれます」

「そう、よね…」

「おい甘露寺、お前は伊黒頼むわ。冨岡は俺が引き剥がす」

「え、えぇ!」

「ったく、それなら俺が時透どうにかしてやるかァ」


月陽ちゃんが居ないと、駄目なの。
ここにいる人達皆、月陽ちゃんが大好きなのよ。

だから、早く帰ってきてって何度も神様にお願いしたわ。
なのに私ったら駄目ね。

月陽ちゃんはお友達なのに、あなたの事忘れちゃうなんて。


「…っ、ごめんね月陽ちゃん。やっと思い出したわ…!」


涙を堪えながら鉄珍様の元へ向かう。

私に背を向けて真っ直ぐに炭治郎君たちの元へ走り出した月陽ちゃんの背中を見て、雷が落ちたみたいに思い出した。

思わずその手を掴まえてしまいたい衝動に駆られたけれど、我慢しなきゃ。
大丈夫、月陽ちゃんは私達の事を覚えていてくれたんだもの。

きっと何か理由があって顔は隠していたみたいだけれど、すぐ近くで私達を見ていてくれた。

狐の君って呼ばれながら、私達を陰ながら助けていてくれた。

まるで夜闇を照らすお月様のよう。

私達を明るく導いてくれる。


「ちゃんと、ちゃんと謝りたいから…会いに行くわね!」


ごめんなさいと、ありがとうを言いたいから私は今目の前の鬼を倒して月陽ちゃんに会いに行くの。


「…私、いたずらに人を傷つける奴にはキュンとしないの」


だから、私は私の役目を果たすわ。
お願いよ、もう二度と消えたりしないって約束して欲しいの。

どうして皆が忘れちゃっていたのかちゃんと教えてほしいわ。

これからは貴女の助けをしたいの。


「大丈夫ですか鉄珍様!!しっかり…!」

「う…」

「鉄珍様聞こえますか」

「若くて可愛い娘に抱き締められて何だかんだで幸せ…ゴフッ」

「やだもう鉄珍様ったら!」


頑張りましょうね、月陽ちゃん。
私達ならまた出会えるもの。





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