ドキドキする鼓動を抑え義勇さんと共に家の中に入れば、おにぎりと肉じゃがが机の上に置かれていた。


「美味しそう」

「ちょうど余っててね。冨岡さんとあたしは月陽が帰ってくる前に食べたから冷めないうちに食べて」

「いただきます!」

「冨岡さんもゆっくりしててね」


蒼葉さんのご飯は全てが美味しい。
人の温かみがある味と言うか、母の味と言うか。

おにぎりを食べて肉じゃがを咀嚼していると、側に寄った義勇さんが私をじっと見つめているので肉じゃがを箸で取り口元へ持っていくと口を開けて食べてくれた。

何というか義勇さんて意外と豪快に食べる所があるから、大きい口を開けて食べてる所を見るとドキドキしてしまう。
あれ、私変態?


「…うまい」

「ふふ、ですよね」


十分に咀嚼して飲み込んだ後無表情にそう言った義勇さんに思わず笑みが浮かんでしまう。
明日の仕事の件は義勇さんがお風呂に入ってる時に蒼葉さんに報告して、出来るだけ聞かれないようにしなきゃいけないな。


「明日も鬼狩りに行くのか」

「はい」

「どこに行く」

「そこ聞きます?」


ご飯を運ぶ箸を止め口角を引くつかせた私に頷く。
何か嫌な予感でもしてるんだろうか、相変わらず義勇さんは勘が鋭い。


「えと、都会です」

「都会?」

「はい。ちょっと人が多い所ですね」

「そうか。なら、帰ってきたら鴉を飛ばしてほしい」


迎えに行く、と囁いてそっと頭を撫でてくれた。
はぁ…かっこいい。

照れたまま義勇さんへ頷くと満足してくれたのかそのまま何も言う事はなく長くなった髪で遊んでくれていた。


「蒼葉さーん、ご馳走様でした!」

「食器はそのままにしてていいから、冨岡さんをお風呂に案内してあげて」

「はーい!義勇さん、お風呂先にどうぞ」

「いや…」

「家主がそう言ってるんです、気にせずどうぞ」

「分かった」


義勇さんをお風呂場に案内して、中へ入ったのを確認するとさっきから何やらやっている蒼葉さんの元へ顔を出す。


「蒼葉さん?」

「あぁ、月陽。これを冨岡さんに貸してやって」

「これ、旦那さんの」

「着替えが必要だろう?」

「ありがとうございます」


何かしていたのは義勇さんの夜着を探していたんだと頷いて服を受け取る。
そうだ、今の内に伝えておかなきゃ。


「あの、蒼葉さん。明日から少しまた長期で…」

「行っておいで」

「え」

「それが月陽の決めた道なんだ、止めたって無駄なんだから。だからちゃんと見送るよ」

「……すみません」


私が話しているのを遮るように蒼葉さんは言った。
笑い掛けてくれたけれど、その手が震えている事に気が付いてそっと蒼葉さんに触れる。

水仕事で所々あかぎれになっている、優しい手。


「私は私の決めた事を必ず成し遂げます。だから、蒼葉さんは待ってて下さい。出来る限り鴉を飛ばしますから」

「……本当に気を付けるんだよ」


手を握った私を抱き締めてくれる。
鬼殺隊や鬼狩りと関わるなんて、本当は嫌な記憶を思い出すだけだろうに。

それでも蒼葉さんは私や鬼殺隊の方々に手を差し伸べ続けてくれた。


「私は生きて、必ず鬼舞辻無惨を倒します」

「うん」

「だから蒼葉さんは安心して待ってて」

「月陽は強い子だからね、きっと大丈夫だ」

「精進します!」


そう言ってお互い笑顔になった所で、そろそろ義勇さんの夜着を届けなくてはいけない。
鴉の行水と言うわけではないがお風呂から上がるのが早いし裸の義勇さんを見てしまう可能性がある。

そそくさと脱衣所の籠へ着替えを置こうとした瞬間、ガラリと音を立てて裸の義勇さんが出てきた。
違う、振りじゃないんだって…。


「………ご、ごめんなさい」

「いや」

「はは、それじゃ…」

「あぁ」


流石の義勇さんも驚いたのか私を見て裸を隠す事はしなかったけれど、目は大きく見開いていた。
私は私で久し振りに見た義勇さんの裸に顔を真っ赤にしながら自分の部屋の布団に顔を押し付け遅い悲鳴を上げた。

相変わらず良い身体してました!!




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