※甘露寺蜜璃
月陽ちゃんも、しのぶちゃんもとっても可愛い私のお友達。
初めての三人の女子会が開かれて、私は話題を求めるしのぶちゃんに意を決して手を上げる。
少し前に開かれた月陽ちゃんを交えての柱合会議で、ずっと気になってたの。
「月陽ちゃんと冨岡さんはどんな関係なのかしらっ!」
男の人と女の子がひとつ屋根の下、無粋かとちょっとだけ思ったけどどうしても聞いてみたくて少しだけ目線を逸らした月陽ちゃんが淡々と答えてくれる。
否定した言葉にしのぶちゃんが首がどうとか言ってるけど、そう言えば伊黒さんもそんな事を言っていた気がするわ。
結局最後まで二人の進展は冨岡さんの一方通行だってしのぶちゃんはがっかりしてたけど、優しいあの人の気持ちを思うとどちらにも心は傾かなかった。
ある時私が一人でご飯を食べてる時、何だか視線を感じて周りを見回してみるとどんぶりを重ねた机を見て驚いた顔の人と目が合った。
あの目は見た事があるわ。
「……」
悲しくなって器を机の上に置こうとした時、視界の端で誰かの手が映り込んで思わず顔を上げれば月陽ちゃんが笑顔で立ってた。
「あっ、月陽ちゃん!」
「こんにちは、蜜璃さん」
「こんにちは、奇遇ねぇ!」
「えぇ、本当に。ご一緒してもよろしいですか?」
「も、もちろ…」
月陽ちゃんと会えて嬉しくて、椅子を詰めて隣を空けたけど不意にさっきの拒絶するような男の人の視線を思い出して詰まってしまった。
本当は一緒に食べたいけど、もしかしたら月陽ちゃんまでそういう視線にあってしまうかもしれない。
「…女性の食事中に不躾な視線を送る輩は常識知らずにも程がありますね」
「っ、」
「人を評価する前に己を見直しなさい」
言い詰まった私をさっきの男の人から視線を遮るように立ったままの月陽ちゃんが強い口調で話し掛ける。
怒った月陽ちゃんなんて初めて見るから驚いたけど、凄く…凄く嬉しい。
言葉を突然向けられた男の人が走り去っていく気配を感じながら空けたスペースに腰を下ろす月陽ちゃんの羽織を掴みながら穏やかにときめく胸を抑える。
「月陽ちゃーん!ありがとう」
「私は蜜璃さんが美味しそうに食べてる姿、とっても可愛いと思います」
「きゃー!可愛いなんて照れるわ!」
「伊黒様が眺めていたくなる理由、凄く分かりますもん。あ、すいません!鮭定食お願いします」
なんてかっこいいのかしら。
当たり前みたいに私を庇ってくれて、気を使わせないようにいつも通りで居てくれて。
トラウマが呼び覚まされてちょっとだけ弱くなった心に月陽ちゃんの優しさが染みて机の上にシミを作った。
「わ、わ!どうしました!?やっぱりあの人ぶん殴ってきますか?!」
「ぶん!?ち、違うわ!」
握り拳を作った月陽ちゃんに首を横に振れば心配そうに覗き込んできて、笑顔を作ってみる。
悲しくなんてないわ。
だって嬉し涙なんだもの。
そんな私の気持ちが伝わったのか目を細めて笑い返してくれたから涙をふいてまだまだたくさんあるご飯を平らげた。
帰り道、このまま任務に向かって冨岡さんと合流するって途中まで一緒に歩いてると目の前から小さな子がこっちに向かって手を振ってる。
「月陽ちゃーん!」
「わ、久し振りー!もう夕方だから早くお家帰ろうね!」
「はーい!」
「月陽ちゃんも子ども好きなのね!」
「はい!癒やされます」
子どもたちに手をふり返す月陽ちゃんと是非妹や弟達に会わせてあげたいわ。
そろそろ別れ道に差し掛かる頃、見慣れた羽織りを着た人が見えてキュンって胸が鳴る。
「月陽ちゃん、お迎え来てくれたみたいよ!」
「え、あ…冨岡さん!」
「甘露寺と居たのか。月陽が世話になった」
「そんな、世話になったのは私で…!私の事、守ってくれたのよ」
「不躾な方だったので退いてもらったまでですよ」
優しい月陽ちゃんに嬉しくて腕へ抱き着くと照れた様に謙遜してる。
「楽しかったか、二人とも」
「はい!」「えぇ!」
「…そうか」
「あ…」
今、冨岡さんが笑った?
一瞬過ぎて見間違いな気もしたけど、月陽ちゃんを見つめる瞳が優しいからきっと見間違いなんかじゃないなって。
「では俺達は行く」
「蜜璃さん、またご飯一緒に行きましょうね」
「えぇ、勿論よ!」
手を振って二人の背中を見つめる。
「ありがとう、月陽ちゃん」
end.
花菱草の花言葉は私を拒絶しないで。
蜜璃ちゃん語り難しかった…!
少し違和感がありましたらすみません…
蜜璃ちゃんは陽だまりのような光の女子で、月陽ちゃんは月の光のような透明感ある光の女子設定なので性格が似ているようで反対の位置に居るイメージで書かせてもらってます。
とにかく楽しかったのでよし。笑
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