「みんなありがとおー!!柱なのにヘマしちゃってごめんねぇぇ」

「助けてくれてありがとうね」


雷鳴を斬った私達は後ろに転がる炭治郎達を振り返る。
深く息を吐いて呼吸を整える。


「任せといて、みんな私が守るからね」

「炭治郎達三人は本体をお願いしていい?こっちは私達が引き受ける」

「月陽さん、甘露寺さん…!」

「行きましょう、月陽ちゃん!」

「はい」


蜜璃さんに頷いて鬼へと飛ぶ。
ある程度の技は見せてもらったからそれに合わせる事は出来るはず。

問題は大技を連発している蜜璃さんの体力だ。
どんなに人より筋力があったとしても体力の限界というのは絶対に来る。


「蜜璃さん、余り力まずにいきましょう」

「えっ…?」

「これが終わったら、私が作ったお団子食べてくれますか?」

「っ、えぇ!勿論よ!月陽ちゃんのお団子食べたい!」

「なら、二人で頑張りましょう」


パン、と両手を叩き合わせこちらへ向かってくる竜を斬る。
こちらが本体でない以上、炭治郎達がどうにかしてくれるまで足止めする事しか出来ない。

幸いもうすぐ夜明けも近い。


「退け、女ァ!!」

「炭治郎達は追わせない!」


深く息を吸って呼吸を全集中させ目の前の鬼へ向かう。
激化する鬼の猛攻を防ぎ続けるにはもっと集中しなければいけない。

蜜璃さんも広範囲の攻撃を防ぐ為に集中している。
心なしか、いや。確実に蜜璃さんの反応速度や技のキレも増している。


(私も、頑張らなきゃ)


食いしばりながらゆっくり呼吸を吐き出し竜を斬る蜜璃さんの技の合間から踏み込んで次の攻撃を私が斬る。


「月の呼吸、終ノ型改 十六夜ノ舞」


熱い。
妓夫太郎の血鬼術を防いだ時のような感覚に似ている。

沈みかけた月の光に刀を翳し舞うように竜を斬り崩していく。


「月陽ちゃん!」


聞こえた蜜璃さんの声に後ろへ飛び退き四方八方から私達を殺しに掛かってくる鬼の攻撃をいなし、鬼へ近付く。
口を開き蜜璃さんを気絶させた技を使おうとする鬼より先にそこへ日輪刀を突き刺す。


「ガァァッ!!」

「同じ技を二度は喰らわない」

「キャーッ!かっこいいわ!」

「み、蜜璃さん」


はしゃぐ様に剣技を魅せてくれる蜜璃さんに一瞬気を取られながら、すぐに再生する鬼の腕を斬り距離を取る。

あの太鼓で竜を操っているのならばそれをどうにかすればいい。
少しでも攻撃の手を休めずあちらを遅延させるかだ。


「蜜璃さん!私は鬼を狙います!」

「えぇ、分かったわ」

「よろ、しくお願い…します」

「あら?月陽ちゃん、それ何かしら」


振り向いた私に大きく頷いてくれた蜜璃さんの鎖骨に何かの紋様が見える。
見間違いかと思いながら前を向こうとした私に声が掛けられた。


「!」


その問い掛けに首を傾げようとした瞬間、また向かってきた竜の攻撃を避け吹き飛ばされそうな風圧を斬る。

猗窩座と戦った時と比べればこんなもの。

それに体力は消耗しているけれど今調子がいい。


「如月」


私に集中攻撃する事にしたのか、五体の竜が向かってきたのに気付いて刀を鞘へ戻し最速でその場から姿を消し気配を断つ。


「伍ノ型 皐月」

「小賢しい!」


視界から消えた私を見失った鬼の背後に周り太鼓を破壊しようとするけれど、素早く動かれ一つしか壊せなかった。

着地した瞬間、目眩がして膝をつく。


「あうっ!」

「っ、葉月!」


蜜璃さんに標的を変えた鬼にふっ飛ばされる姿が視界に入り、すかさず竜を粉々に散らし前に立つ。

もうきっと蜜璃さんも限界なんだろう。
額や腕から血を流す蜜璃さんを見て刀を握る握力を強める。

大丈夫、きっと炭治郎達ならやってくれる。


「蜜璃さんは私が守ります」

「月陽ちゃ…っ」

「全集中…月の呼吸 終ノ型」


大量に押し寄せる竜の群れに眉を寄せ歯を食いしばる。
全て避けきれるか分からない。
けれど蜜璃さんの盾になる。

今度は私が。


「月詠ノ舞」


最後の力を振り絞り敵の全ての攻撃を斬って交わしていく。
本来ならば二刀流でする技だけれど、今の私にはもう父さんの刀はない。


「ぐっ、ぅ…!」


所々から血が吹き出て鼻血が垂れてくる。
二刀分の動きを一つの刀で補うのはキツイ。

最後の攻撃を斬り、朝日が登るのが見えた時残っていた竜が私達を襲ってくる。


「っ、くそ…!」

「ぎゃぁぁぁー!もう無理!ごめんなさい、殺されちゃうー!!」

「みつ、りさん!」


泣き叫ぶ蜜璃さんをどうにか守ろうと抱き締め目を閉じる。
もう動けない。
蜜璃さんを突き飛ばす力も無い。


「義勇、さん」


ごめんなさい。
そう思った時、蜜璃さんの声を聞きながら意識を手放した。





Next.





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