昼は団子と隊士の人達にご飯を作って、夜は見回りをする日を過ごして二ヶ月程が経過した。

村田さんに話を聞くと炭治郎はまだ目を覚ましていないらしい。


「よっ」

「あ、後藤さん!」

「相変わらず元気そうだな」

「えぇ、元気が取り柄ですから」

「そっか」


最近来るようになった隠の後藤さんはとても良い人だ。
隊士であった時は見ることの無かった顔も食事時は外すらしく意外とかっこいいことを知ってしまった。

鬼殺隊って顔の審査でもあるのかな。


「今日は何にしますか?」

「あー、いや。今日は団子だけでいいや」

「珍しいですね」

「まぁな。これ、月陽に渡しに来ただけだし」

「何です?」


ひょい、と机の上に箱を出した後藤さんは辺りを見回した後箱の中身を開けてくれた。
こ、これは…


「カステラ…!」

「そ。ちょっと知り合いの隊士に買ってやろうと思ったんだけどさ、月陽の顔が浮かんだから奮発した」

「嬉しい!ちょっと待ってて下さいね!」


両手を合わせ喜んだ私は急いでお茶と団子を用意して後藤さんの座る席へ戻った。
周りにお客さんも居ないし、もう営業も終わる時間だからご一緒してもいいだろうと隣へお邪魔する。


「うお、ちっ…近くねぇか?」

「お隣に座ってるだけですよ!一緒に食べましょう?」

「お、おう」


カステラを皿に移して後藤さんと半分に分ける。
なかなか食べられないお菓子を前に二人で目を輝かせながら手を合わせいただきます、と挨拶をした。


「……んー!!!」

「うっま!」


ふんわりとした生地が口の中で溶けて甘い香りが広がる。
団子やちょこれいととはまた違った甘さに両手で頬を包んだ。


「美味しい!幸せ!ありがとうございます後藤さん!」

「おう、喜んで貰えて何よりだ」

「きっと知り合いの隊士さんも喜びますよ」

「だといいけどな」


お互い顔を見合わせながら笑っていると、ふと外に人の気配がして入り口へ視線をやると見覚えのある羽織を着た人物が立っていた。


「……義勇さん」

「すまない、邪魔をした」

「うぇ!?水柱…!いやいや、こちらこそすんません!俺今帰るんで…っ」

「いい」


悲しそうな顔で私を見た義勇さんは背を向けて一瞬で姿を消してしまった。
唖然とした私達二人は無言で義勇さんの居た場所を眺めふと我に返り顔を見合わせる。


「…あの人、いつも何考えてるからよく分かんねぇ顔してるけど何だったんだろうな。つか珍しく雨音さん連れて来てなかったし」

「う、うん…」

「ま、とりあえず俺もそろそろ行くわ」

「あ、はい!団子、今包みますね!」


何か用事があったのかな、なんて思いながら後藤さんの口からも聞こえた雨音さんの名前に口を閉じ箱に団子を包む。
あれから結構な時間が経っていたし、その間ご飯を食べに来る事もなかったから私の事なんて忘れてしまったのかと思ったけど。


(何であんな悲しそうな顔するんだろ)


雨音さんと何かあったのだろうか。
そんな事を思いながら手で持ちやすいよう紐を括り付け席で待っている後藤さんの元へ向かう。


「お待たせしました!お礼にちょっと団子おまけしておいたので、良かったらその隊士さんと食べて下さいね」

「お、月陽の団子なら喜んで飛び起きそうだな」

「ふふ、お上手ですね」

「蒼葉さんの団子も美味いけどちょっと歪な月陽の団子も美味いし」

「もー!歪って言わないで下さいよ!」

「ははっ、冗談だよ。そんじゃまた来るわ」

「はい、ありがとうございました!」


お代を頂き隠の頭巾をかぶり直した後藤さんを手を振って見送る。

すると入れ違いで蒼葉さんが店に顔を出してくれた。
今日はお医者様の所に行って来ると言っていたからその帰りなんだろう。


「蒼葉さん、おかえりなさい!」

「ただいま!」

「あれ、布外れてる」

「やっと自由に出来る許可貰えたからね!」

「わ、良かった!」


両手を振った蒼葉さんに笑顔を浮かべ抱き着く。
いきいきとしてる姿を見てとても安心した。

でも正直今まで一人で頑張り過ぎていたし、その分休んでもらったのだと思えば丁度良かったのだと思う。


「じゃあこれからは少しずつ復帰ですね」

「え?」

「少しずつ、です」

「…はは、何だかいつもとは逆だね」

「たしかに!」


このお店はやっぱり蒼葉さんあっての場所だから、もう少し様子を見たら刀鍛冶の里に行こう。

ちょっとだけ顔を見せてくれた義勇さんの事も気になるけれど、またその内会えるかもしれないし今は蒼葉さんの快気祝いに夜ご飯のおかずでも買いに行こうかなと思いながらお店の片付けを一緒に終わらせた。




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