アヤカシモノ語リ | ナノ
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「雪無の決意は受け取ったよ。だけどいいかい、然るべき時には私の子供達を頼ってほしい。皆必ず雪無の力になってくれる」

「はい」

「九尾は雪無が居なくちゃ封印は出来ない。こちらも全力でサポートするつもりだ」

「ありがとうございます」


学園長が私の側まで来てくれて、優しく頭を撫でてくれる。
暖かく大きなその手はとても優しかった。


「さて、私は天元が迎えに来たようだからお暇しよう」

「あっ、でしたらお見送りを」

「雪無は義勇と話してあげて欲しい。心配せずとも式神の子がついてきてくれるようだからね」

「おう、お前の主はしっかり俺が下まで送り届けてやる」

「お館様、申し訳ありません」

「いいんだよ。それじゃあまたね、雪無」

「はい!赫、学園長の事頼んだよ」


赫が付き添い居間から出ていく学園長の背中を見送り、冨岡先生へ向き直る。
そう言えば胸元を寛げたままだったとシャツのボタンを締めれば黙っていた冨岡先生が口を開いた。


「何を言っても無駄なのか」

「……覚悟は決めています」

「なら、俺が言えることは一つだけだ。死ぬな」


机に身を乗り出した冨岡先生が私の頬に触れながら苦しそうな声で呟く。
頬に触れる手に自分の手を重ねて私は困った様に頷くしか出来なかった。

そんな私に眉を寄せた冨岡先生はそのまま抱き寄せ首筋に顔を埋める。


「と、冨岡先生」

「必ず守る。雪無には俺だけじゃない。鬼殺隊の全員がついている」

「…はい」

「特に煉獄は怒らせると怖い」


ポツリポツリと言い聞かせるように話してくれる冨岡先生の声が優しくて心に響いてくる。


「それと、これからは一人の時間は絶対に作るな。家業の事があって赫や蒼が居ない登校から下校の時間は俺達が必ず雪無の側につく」

「周りの目は大丈夫なのですか?」

「ストーカー被害にあっていたと言えば何とかなると宇髄が言っていた」

「なるほど。でも私だけでは無くそちらでも一人になる時間は作らないよう鬼殺隊の方々もお気を付けてくださいね」


理由としてはとても最適だと思い同意させてもらった。
九尾の狐、あれはとてもずる賢く頭も回る。
今回の様に伊黒先生が一人の時を襲ったのも計算の内となれば鬼殺隊でも警戒が必要だと思う。


「基本俺達は本部へ帰るようにお館様から言われた。時透達は基本二人で居るようだから例外としてあるが」

「それなら良かったです」

「この件に関して雪無にはすまないと思うがあちらとも連携を取らせてもらってある」

「あちら?」


冨岡先生は小さく頷いて、刑事課のと呟いた。
そう言えば珠世さんと学園長は繋がっていると話を聞いたこともあるし、連携を取ってくれているのならこちらとしても有り難い。


「謝る事じゃありません。寧ろ有難く思います」

「そうか。送り迎えはそこの課の愈史郎という者があちらではしてくれるそうだ」

「愈史郎さんでしたら安心です」


全員が顔見知りなら九尾が化けて騙されることもない。
けれど私にはもう一人心配な人が居た。


「あの、果生ちゃんの事は…」

「そちらも俺達がしっかりと警護するつもりだ。親が悲鳴嶼と仲もいいと聞いているし、安心していい」

「そうですか。とても心強いです」


悲鳴嶼先生の名前は家業の方でもとても有名な方だ。
まさか鬼殺隊とは思わなかったけれど、あの方が果生ちゃんの警護をしてくれると言うのなら心強い事この上ない。


「主、お食事できましたよ」

「ありがとう、任せてごめんね」

「いいんですよ。冨岡先生も食べていくでしょ?」

「すまない」


これからの事を話し合っていると、キッチンから蒼が食事を持ってきてくれる。
いつの間にか戻ってきていたらしい赫も手伝っていたようで、新しく淹れたお茶を持ってきてくれた。


「赫、蒼。ありがとう。いただきます」

「召し上がれ」

「おう!じゃあ俺はちょっと蒼と遊んでくるぜ」

「遊び?」

「違うでしょ、全くアンタは。鬼殺隊の産屋敷さんから携帯というものをお預かりしたので操作確認をしてくるだけですよ」


自慢気に見せてくる赫と、嬉しそうにはにかむ蒼が色違いの携帯を見せてくれる。
二人の情報は私なら共有できるけれど、鬼殺隊の先生達には分からない。

流石鬼殺隊のお館様と呼ばれる方だなと感じながら、後でお礼をしようと考える。


「もし分からなかったら聞いてね」

「おう!」

「分かりました」


そう声を掛ければ嬉しそうに二人は居間を出て行った。
途端に静かになった居間には黙々と食べる冨岡先生と私だけの二人になる。

お互い食事時に話すタイプではないのでひたすら私達が食事を取る音だけがこの部屋に響く。


「本当は側にいてやりたいが呼び出しがあった。今日は見回りはない、ゆっくり休め」

「はい。冨岡先生もお気を付けて」

「あぁ。馳走になった」


そうして冨岡先生と食事を終えると、本部から呼び出されお礼を言って帰っていく姿を見送る。
外の静けさが嵐の前のような静けさに感じて、私は早めに床へつくことにした。




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