態勢を変えるために身じろいだ私の背中に何かが当たった。


「…ん?」

「何を笑っている?」

「………ぎ、義勇さん」


声に振り向けば不思議そうな顔で私を見ている義勇さんが居た。
位置的に私が寝ていた頭の所に腰を下ろしている。

と、言うことはだ。


「もっ、もしかして今の聞いてました…?」

「………」


私の問い掛けはふいっと顔を背けて言い澱んでいる義勇さんの行動に肯定された。

急に顔に熱が集まった私は義勇さんの布団を被り全てを隠す。
今更遅いかもしれないけれど、本音がだだ漏れだった独り言を聞かれて平気でいられるほど私の精神は強くない。


「ごごご、ごめんなさいっ!」

「…いや」

「一生のお願いなので今すぐ記憶から抹消していただけませんか…」


気まずそうな義勇さんの声に布団を被りながら土下座をする。
何でも言うことを聞く。
今言ってしまった言葉を忘れてくれるというのなら何でもしよう、と思いを込めて少しだけ開いた布団から義勇さんを覗いた。

そこには顔を赤らめた義勇さんが私を見つめている。


「ひぃ、かっこいい」

「…悪いが、忘れる事は出来そうにない」

「でっ、ですよね…」

「だが、お前の気持ちに答えてやることは出来る」

「へ?」


不意に布団に義勇さんの手が入ってきて、無理矢理私の身体を引きずり出されると優しく抱き留められた。

私の気持ちに答えるとは、どのような事でなんだろう。
抱き留められた態勢のまま、互いに顔を染めた私達は見つめ合った。


「触れたいのなら触れていい。俺も、そうする」


抱き締めた私の唇を指でなぞった義勇さんが薄く微笑む。
何となく雰囲気で目を閉じるとそっと口付けられた。

やっと現実で触れてもらえたという実感と共に、夢の中の義勇さんとの光景が思い浮かぶんでしまう。
つい身構えてしまった私を義勇さんが見逃すはずも無く、ちょっとだけ拗ねたような表情をさせてしまった。


「…別の事を考えているな」

「な、何もっ!」

「夢」

「!」


しらを切ろうとした私にポツリと義勇さんが呟く。
つい動きを止めてしまった私を膝の上に乗せて、逃げなくさせた義勇さんは目を細めた。


「俺の名を呼んでいた」

「…義勇さんが、夢に出てきたから」

「どんな夢を見ていたんだ」

「そっ、それは!」

「随分と厭らしい声だった」


耳元で囁かれた私は勢い良く義勇さんの顔を見て、すぐに逸らしてしまった。
今まで見たことない表情をしていて、身体全体が心臓の音を響かせ変な感じがする。

夢の中以上の破壊力に無意識で羽織を握り締めた。


「夢で足りたか?」

「…っ」

「夢の中でどこまでしたんだ」

「口づけまでしかしてません!」

「そうか」

「あ!」


しまったと口を塞いだけど、遅かった。
無表情なはずの義勇さんから楽しそうな雰囲気を感じる。

すると無言で私を抱き抱え立ち上がった義勇さんは自分の部屋に向かって干していたはずの布団へ下ろした。


「そんなに求めていてくれたとは知らなかった」

「ひ!」

「ななしには悪いが鮭大根より先にこっちを戴こう」

「め、召し上がれ…?」

「あぁ、いただきます」


ふと笑った義勇さんが夢の中の義勇さんに酷似していて、心臓がぎゅっとした。
私の義勇さんは今日もかっこいいです。

この後たくさん戴かれた私は義勇さん以上につやつやで夜の見回りに向かった。



おわり。

なな様リクエストの冨岡さん微裏夢でした!
ちょっと糖度高めに頑張ってみましたが如何でしたでしょうか…
胸までしか触ってないので微裏と言い張る()