「ななしは俺の事好きって思う?」

「は、はぁ?質問してるのはあたしなんだけど…」

「触れたいって、側に居たいって思ってくれてる?」


絡めていた手を柔らかく解いてななしの胸に掌を当てる。
そんな事しなくたって俺の耳には聞こえてるんだけど、ドキドキを体感的に感じたかった。

そうしていると、ななしはゆっくり静かに頷いてくれる。


「…っあ"ーーー!!!」

「!?」

「もう無理。ほんと可愛過ぎて何なのななし。俺を殺す気なのかな」


ついに鼓動の煩さに音を上げた俺は腹から声を出して叫んだ。
目の前のななしは目を丸くて驚いてたけどごめん、ほんっと無理。

もうどうにかなっちゃいそう、こんなの。


「何言ってんのあんた…」

「可愛いの暴力がやばい」

「意味分かんないんだけど」


さっきまで照れてた癖に突然冷たくなるんだもんな。
今までそのつんけんした態度が嫌いだったけど、今じゃそれも好きだって思っちゃうなんて恋の効果どんだけよ。こっわ。


「兎に角!」

「う、うん」

「これからななしは俺の彼女って事ね!」

「…うん」


やっべ幸せで死にそう。なんて思いながらまた恥ずかしがるななしにキュンとする。
本当なら彼女すっ飛ばして俺と結婚して欲しいけど、他の子達にしてきた事をななしにしたいとは思わなかった。

大切にしたいんだ、この気持ちは。
ゆっくり一緒に育てたいって思えるから。


「ね、ねぇななし」

「何?」

「せっ…」

「せ?」

「接吻、してもいいですか…!」


もう夕方になるし、そろそろ甘露寺さんだって帰りの遅いななしを心配してるだろうから帰さなきゃなって思うんだけど、どうしてもこのまま離れたくなかった。

ぶん殴られる覚悟で目を瞑りながらお願いすると返ってきたのは無言で、これ終わったとか思ったんだ。


「…仕方ないなぁ」

「え?」

「ちょっと、だけだよ」


頬を染めながら自分から俺に寄り添ってくれたななしはそっと目を閉じて顔を向けてくれる。

え、いいの?まじ?なんてやり取りを心の中でしつつも俺は意外と華奢なななしの肩を掴んでそっと柔らかい唇を重ね合わせた。


その後約束通り泣く泣くちゃんとななしの事を甘露寺さんのお屋敷へ送り届けた俺は全力疾走で炭治郎達の元へと向かった。


「きぃぃぃーてよぉぉーーー!!」

「うわっ、善逸!?」

「汚え唾飛ばすんじゃねぇ!」


変わらず部屋にいた炭治郎に飛びついて今日の事を話す。
ななしと仲直りした事、恋を自覚した事、そして付き合った事。

それを炭治郎はただ頷くだけで聞いてくれたし、珍しく伊之助も口を挟まないで多分聞いてくれてた。


「はんっ!俺様に感謝しろよなボケ!」

「…やっぱりお前嘘ついてたんだ」

「伊之助は仲直りさせたかっただけなんだよな!」

「鬱陶しい空気が嫌いなだけでテメーらがどうなろうと俺様には関係ねえけどな!」

「…ありがとう」


いつも通りなのか、照れ隠しなのか分からないけどただ感じたままに伊之助にお礼を言った。
きっとあのままだったら仲直りする事も、ましてやななしの可愛い一面を知る事も無かっただろうと思うと簡単に言葉が口をついて出る。

それでも照れくさかった俺は目線を反らしちゃったけど。


「ほわ……じゃねぇ!なら今度衣のついたアレを奢れ!」

「いいよ。炭治郎も、ごめんな」

「俺は別に何も。でも良かったな、善逸」

「…うん、俺今めちゃくちゃ幸せ」


次の日から彼女自慢をしだした俺はひたすらウザがられたし、本人にさえ迷惑そうな顔をされたけどそれだっていいんだ。
だって俺はななしの彼氏だし、将来的には旦那になる予定なんだから!


「生きてるって素晴らしい!!」

「うるっせーんだよこの惚気野郎!」

「ごぶっふぁ!」


爺ちゃん。
俺、本当に大好きな人に巡り会えたよ。
ちゃんと紹介しに行くからさ、頼むからその時は俺の変な話しないでくれよな。




おわり。


真由様リクエストで、お互いタイプじゃないはずなのにどんどん意識しちゃう感じの善逸夢でした!
意識しちゃうぶっ飛ばして付き合っちゃいましたが大丈夫でしたでしょうか…
今回汚い声を上げないタイプの善逸夢です。笑
いつもの善逸と差を出したかった結果こうなりましたが、すっごく楽しく書かせていただきました!
リクエスト、お祝いのお言葉ありがとうございましたー!!