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晴天にも恵まれ桜の花びらが散る今日、私はキメツ学園を卒業した。

私は皆が集まりいろいろな声が響く校庭とは真逆に位置する場所で一人の人を待っている。
ここは在学する生徒の中で噂の告白スポットで、私は一世一代の告白をしようとしていた。

ふと目を閉じ在学中の数年を思い出す。
一年の始まり、たまたま風邪で委員会を決定する日を休んだ私は最も人気のない風紀委員の枠を私の名前で勝手に埋められていた。

風紀委員は顧問の先生が怖いという噂を聞いていたから、どんな先生かと休み明けに震えていたのを思い出す。
でも、その時から私の景色は更に色付き始めたのは今でもいい思い出。
私の高校生活は、あの人でたくさんの気持ちを知りそして辛さを知り色々なことを学ばせてくれた。


「冨岡先生…」

「なんだ」

「ひっ!?」


ふと名前を呼べばすぐ後ろで大好きな声が聞こえて思わず肩を震わせてしまった。
何もおかしい事はない、だって私が呼び出したんだから。

振り返って見るといつものジャージ姿ではなくスーツを身に纏った冨岡先生が居た。
普段見ることの無い貴重な姿に卒業よりも感動したのは朝の事。


「す、すみません!お忙しいのに呼び出してしまって」

「いや」

「…冨岡先生に言いたいことがあって」


どくんどくんと心臓が音を立てるのをどうにかこうにか紛らわせたくて卒業証書の筒を少し強めに握りしめる。
ここまで来たんだ、想いを口にする機会は今日この日を持って他にない。
頑張らなきゃ。


「3年間、風紀委員として面倒を見てくださりありがとうございました」

「…お前は良く働いてくれた。俺としても助かった」

「きっと、頑張れたのは冨岡先生のお陰です」


言いたいことの本質は違えどこれは本当に思っている事なので、少しくらい遠回りさせてほしい。
だってこれが最後かもしれないから。

それでも次の言葉がなかなか出てこなくて、俯きそうになった時冨岡先生が隅っこに置かれたベンチを指差す。

あそこに座ろうと言う意味なのだろうか、そう思って冨岡先生を見つめてみたら私の手を取って誘導してくれる。
触れられた所が熱い。こんなに誰かを好きになるなんて今後あるのだろうか、と思う。
私は今日卒業したとはいえ、冨岡先生には他の生徒と変わらない存在だろう。

そう思えば思うほど、気持ちは溢れそうなのに不安ばかりが募ってしまった。
急に黙り込んだ私を気遣ってか、冨岡先生は胸ポケットから何かを取り出して私に差し出してくれる。


「…これ」

「渡そうと思っていた。3年間、ご苦労だった」


風紀委員と書かれた腕章に私の名前が書かれ後輩たちが寄せ書きをするように沢山の文字が並んでいる。
隅っこには冨岡先生の文字もある。
嬉しくて泣きたくないのに目の前が涙で滲む。
溢れだした涙が頬を伝うと、冨岡先生はそれを黙って手で拭ってくれる。


「泣くな」

「だって…」

「…俺からも話がある」

「はな、し?」


潤んだままの瞳で冨岡先生を見れば少し眉を下げて頷く。
もしかして振られるんじゃないだろうか、さっきまで込み上げていた暖かいものが一気に冷えた気がする。


「や、やだ…」

「いいから聞け」

「だって、こわ」


怖い、と言いたかった私の唇は何かに遮られ言葉を発する事が出来なかった。
目を見開いて目の前を見ると今までにないくらいの冨岡先生の顔が近くにある。
思わず悲鳴を上げそうになって口を開いた瞬間、更に口内にナニかが侵入してきた。

口内を舐め上げられ、その間に身体を密着させるよう抱き締められて私の頭の中は大混乱している。

やっと口が解放された時には妖艶に目を細めた冨岡先生が居た。


「今日をもって美央、お前は俺の生徒ではなくなる。…だから、これからは俺の側に一人の女として側にいてくれ」

「っ、冨岡せんせ…」

「そう呼ばれるのは背徳的でいいが、これからは名前で呼んでくれるか」


もう何が何だか分からないけど、冨岡先生も私を好いてくれてるということでいいのだろうか。
私はまだ自分の気持ちすら言っていなかったのに。
このままじゃ駄目だと、感動でまた涙が出そうな涙腺にムチを打って冨岡先生の手を握った。


「私、冨岡先生が好きです!」

「知っている」

「あぅ…」

「これからクラスで食事会があるんだろう。それが終わったら連絡しろ、迎えに行く」


ちょっぴりドヤ顔の先生が私の耳に唇を寄せて、連絡先の書かれた紙を渡される。
呆けている間に冨岡先生はベンチから立ち上がりてちてちと可愛い音を立てて私から離れていく。


「美央」

「は、はいっ!」

「卒業おめでとう」


見送るつもりでいた私に少し離れた所で振り返った冨岡先生は、さっきとはまた違う優しい笑顔で私の卒業を祝してくれた。

これからは、生徒としてではなく冨岡先生の彼女として側にいることが出来る。
また歩き出した冨岡先生の背中を見ながら受け取った連絡先の紙を胸に押し付けて幸せを噛み締めた。
告白スポットってすごい。


学校の告白スポットでキス


おわり

ずっと先生のターン!卒業したてホヤホヤの生徒にえっちなキスするなんて!けしからん!もっとやれ(落ち着け)(落ち着け)

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