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「炭治郎ー!お待たせ!」

「美央!もう委員会は終わったのか?」

「うん。昨日雨が振ったし雑草の駆除だけだったの」


俺と美央は付き合っている。
今日は一緒に帰る約束をしていたんだが、美化委員の仕事があると言われ宿題をやりながら彼女の帰りを教室で待っていた。

よしよしと俺が彼女の頭を撫でると恥ずかしそうにする美央の笑顔と、ほのかに香る土と花の香りが大好きだ。
守りたいこの笑顔、と善逸が言っていたがその通りだと俺も思う。

この学園には珍しいレベルの純情可憐な生徒で、妹の禰豆子にも負けない可愛さだ。
横に降りた髪の毛を耳に掛ける仕草は美央が照れた時にする癖があるんだけど、それが本当に男心を擽ると言うか何というか。


「えへへ、待たせちゃってごめんね。帰ろっか!」

「あっ、あのさ美央!もう少し話していかないか?」

「私は大丈夫だけど、でも…禰豆子ちゃんお家で待ってるんじゃ…」


少しだけ美央と話したくて引き止めちゃったけど、迷惑じゃなかっただろうかと思ったけどそれは杞憂みたいだった。


「今日はしのぶさんと買い物に行くって言ってたし…それに、美央が良ければもう少し話したい」

「そっか。わたしも炭治郎ともっと一緒に居たかったから、凄く嬉しい」


目を細めて本当に嬉しそうな匂いが美央からする。俺は鼻がいいから、人の感情が匂いから分かったりするけどそんな事する必要もないくらい美央は表情が豊かだ。

校庭からは部活に勤しむ生徒や先生の声が聞こえるけど、隔離された教室は俺と美央の二人だけ。
何だか心がムズムズする。


「それでね、甘露寺先生がね」

「ははっ、甘露寺先生らしいな」


1つの机を挟んで何てこと無い世間話をしていたらチャイムがなった。
外を見たら思いの外暗くなっている事も相まってなのか、会話が止まって暫くの沈黙が流れる。

何だか照れ臭い気持ちになって、美央を見たら顔を俯かせて髪の毛を耳に掛けていた。


「…美央」

「ん?何、炭治郎」

「それはズルい」

「えっ?」


そんな照れた顔をして、こっちを見られたら俺だって。
可愛いって思って気付いたら俺は椅子から立ち上がり机越しに居る美央にキスをしてしまっていた。

一回、小さく音を立てて離れると潤んだ瞳に見つめられてもう一度長めに唇を合わせる。


「っ、ん」

「…っああぁー!!!駄目だ!俺は長男だ!!我慢しろっ!!男だろ!」

「ふぇ?た、炭治郎?」


長めのキスに小さく息を漏らした美央に色々理性がふっ飛びそうになった所を大声を出すことで何とか必死に耐えた。
ここは学校だし、まだ美央と俺は学生だし!
顔を真っ赤にしながら俺を見つめる彼女へ頭を机にぶつける勢いで頭を下げた。


「ごめん!何かもうちょっと色々飛びそうになった!!」

「い、いろいろ?」

「しかもこんな所で、キスしちゃったし…嫌だったか?」

「…嫌な訳、無いよ」


さっきまで合わせていた唇に手を当てて照れた顔の美央がもう可愛くて可愛くて煽ってきてるようにしか見えない自分の頭を抱える。

可愛くてどうにかなりそうだ。
勘弁してほしい。キスをしたのは俺からなんだけど。

これ以上この空間に居たらどうにかなりそうだし、そろそろ下校しなきゃ美央の帰りも遅くなるから立ち上がったまま彼女の鞄と自分の鞄を持って手を引いた。


「そろそろ帰ろうか」

「あ、うん。もうこんな時間だしね」



手を繋いで美央を送っていく為に自分の家とは少し違う方向へ歩く。
送っていくと言うと美央は大丈夫だって首を振るから、俺は男だからって言うと嬉しそうにありがとうと言ってくれた。


「…ねぇ、炭治郎」

「ん?」


美央の家が見えてきた頃、不意に手を引かれた。
そこには教室で見た時のような、照れた顔の美央がもじもじと立っている。


「どうし、た…」


どうかしただろうかと声をかけようと思ったら、俺の唇に柔らかい感触。
驚きで目を見開いて固まっていたら、繋いでいた手が離され美央が少し離れた場所まで走っていく。


「炭治郎、私今日すごく嬉しかったの…だからその…また明日ねっ!」

「え、あ…うん!また明日!」


鞄もいつの間にか自分のを持っていた美央は顔を真っ赤にしながら手を振り家に入っていった。
その後の俺は自分の家に着くまで、いや。着いた後も美央からキスされた事ばかり浮かんで次の日少し寝坊した。




放課後の教室でキス

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