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私は今、非常に…非常に困っている。


「お願いだよー!俺と付き合ってよー!!美央ちゃぁん!」

「我妻君、あの…ここ校庭…」


私は今、同じクラスの我妻くんに血塗れで抱き着かれています。
彼がこういう事をしてるのは何度も見てるから、誰にでもするのは知っているんだけどまさかその矛先が私に向くなんて思いもしなかった。


「あの、ね?我妻君。とりあえず保健室行かなきゃじゃないかな?」

「やだやだやだー!!こんな事で保健室に行くなって冨岡先生にまた怒られるじゃん!?もぉーあの人何であんな暴力的なの!?意味わっかんないわ!」

「う、うーん」


私と我妻君は同じ風紀委員なんだけど、彼の金髪のお陰で冨岡先生によく竹刀でぶっ飛ばされてるのだ。
今日はそのたまたまぶっ飛ばされた先に木があって頭をぶつけた我妻君を介抱したら、こんな事になってしまった。

禰豆子ちゃんや胡蝶先輩は我妻君の扱いに慣れてるからいいけど、私は男の子と話す事も殆ど無ければ今こうして抱き着かれるなんてはじめての経験で。

生徒の人達は皆教室に行ったから、後は私達でどうにかこうにか校庭まで辿り着いたんだけどここから先が進まない。


「俺、美央ちゃんの事ぜっったいに幸せにするからー!こんな弱くて泣き虫な俺だけど、いっつも教室でも風紀委員でも優しくしてくれる美央ちゃんが大好きなんだよー!!お願いだよー!付き合ってよー!!」

「で、でも…我妻君には禰豆子ちゃんや胡蝶先輩がいるでしょ?」

「もう禰豆子ちゃんやしのぶ先輩は挨拶みたいなもんだから!!え!?もしかしてヤキモチ妬いてくれたの?可愛過ぎじゃない?もぉー!安心してくれていいんだよ!好き!!」


更に巻き付く腕がキツくなってしまった。
どうしたものかとお腹に巻き付いた腕をあやすように叩く。
もう授業開始まで20分もない。


「あの、ね?我妻君は私が介抱したから好き…って言ってくれてるんだよね?」

「え?うーん…それは再確認しただけで、元から美央ちゃんの事は特別に思ってたよ?」

「で、でも!善逸君は女の子皆特別でしょう?」

「いやいやいや!そんなこと無いよ!心の中はもう美央ちゃん一筋だもん!炭治郎にめっちゃくちゃ相談したからね!?好き過ぎてやばいんだから!もう!」

「竈門君に?」

「そうだよぉー!美央ちゃんに告白した時疑われたら嫌だからって俺女の子口説かないようにしたんだよ!?見てないかもしれないけど俺美央ちゃんに信じてもらいたくて頑張ってたんだから!!」

「う、うーん…」

「…あのさ、美央ちゃんは俺が嫌い?」


困っていると急に抱き着いて居た我妻くんが立ち上がって、少し潤んだ瞳で聞いてくる。
嫌いな訳じゃない。でも、でも?
でもって何なんだろう。


「嫌いじゃ…ないよ。いつも優しくしてくれて、気を使ってくれる我妻君にはとても助かってるもん」

「~~~っ、そんなの当たり前だよ!だってどんな女の子より美央ちゃんは特別な女の子だもん!」


今までにないくらい真剣な我妻君がすがりつくようにじゃなく、純粋に抱き締めてくれる。
そう言えば最近禰豆子ちゃんに挨拶も、他の女の子の制服検査も大人しかった気がした。


「炭治郎が、美央ちゃんに好きになって欲しいなら変わらなきゃ駄目だって言ったんだよ」

「そ、そうなんだ」

「大好きだよ、美央ちゃん。本当の本当に好きなんだ。君の事を考えると幸せで胸が苦しいくらい。返事、聞かせてくれないかな?」


至近距離で抱き締められて、真剣な顔をされて断れる女の子って居るのかな。
我妻君がこんなに想ってくれてるなんて知らなかった。信じても、いいのかな。


「我妻君、私凄く…嬉しいの。恋愛なんてしたこと無い私だけど、それでもいいの?」

「当たり前だよ!俺は美央ちゃんがいいんだもん!大切にするから!!んもー好き好き大好きだよー!結婚しよう!!今すぐしよう!」

「ひゃ!」


ちゅ、と音がして頬に柔らかく何かが当たった。
一瞬の事で何が当たったか分からなくて、頬を抑えながら我妻くんを見ると本当に嬉しそうに笑う彼が可愛くてどうでもよくなった。
でもね、我妻君。


「俺の美央ちゃん本っ当に可愛い!!もうどうしてくれるの?離れたくないっ!」

「我妻君、あのね…」

「ん?どうしたの?美央ちゃんももっと俺と一緒に居たいの?んもー可愛い!俺の美央ちゃんほんっと可愛いくて困っちゃう!」

「…本当に困ったものだな」

「でしょでしょ?冨岡先生もそうおも…ひぃー!!!」


竹刀を持った冨岡先生が後ろから来てたの。
彼は耳がいいから分かっていたと思ったんだけど、ちがったみたい。
一瞬で間合いを詰めた冨岡先生に竹刀で吹き飛ばされる私の彼はまた手当が必要そう。


「野乃木も授業が始まる。戻れ」

「分かりました」


ちょっと睨まれて私もすいませんと謝ったら冨岡先生は戻っていった。
我妻君を連れて教室に戻ったら友だちにたくさんからかわれちゃったけど、皆に自慢するように話す彼に心がふわふわしたの。
恋ってとっても幸せな事なんだね、我妻君。



校庭の真ん中でキス

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