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「ですので、月陽さん。私からご提案があります」
「な、何でしょう」
「蝶屋敷に通われるのは月陽さんにとってとても大変であり、身体に負担もかかります。ですので、蝶屋敷に住んでいただきたいのです。勿論お子さんが産まれてから帰っていただいて構いません」
「…で、でも。私がいない間この家は」
「俺たちで良ければこの家は必ず守ります!」
元気な声で、炭治郎君は手を上げてくれた。
でも彼はこれからの鬼殺隊を担う柱。それは申し訳ないと首を振ろうとしたら、ぶつぶつと布団にひれ伏していた善逸君が顔を上げた勢いに遮られた。
「俺も!俺も出来る限りここに来ます!」
「山も近いし俺は構わねぇ」
「お兄ちゃん達じゃ心配なので私が基本ここに居ようと思います」
「…みんな」
私の膝に乗った掛布団を力一杯握った。
頼もしく優しい子たちに囲まれ、私のお腹には義勇との子が居る。
泣いてばかりいられないと目を閉じ深呼吸をして、顔を上げた。
私は母になったの。
お腹の子と義勇に、母にしてもらえた。
「アオイちゃん、お言葉に甘えてお世話になります」
医療に精通した人が沢山いる蝶屋敷はこれから妊産婦として生活していく上で有り難い存在である事は確かだ。
きっと義勇も賛成してくれるはず。
よろしくお願いします、と頭を下げればアオイちゃんは私の手を握ってくれた。
「月陽さん、もう一ついい忘れた事がありました」
「…もう一つ?」
「えぇ。ご懐妊、おめでとうございます」
いつも眉をキリッと上げたアオイちゃんが、今やその眉を下げ目を潤ませて祝の言葉を述べてくれる。
そしてそれに続くように炭治郎君達がお祝いをしてくれた。
「ありがとう、皆。本当に、感謝してもしきれないわ」
「いえ!僕達こそありがとうございます!」
「私達兄妹が今ここに生きて居られるのは冨岡さんのお陰です。だから、私からもお礼を言いたいんです。月陽さん、そしてこれから産まれてくる赤ちゃん。生きていてくれてありがとうございます」
義勇、聞いて義勇。
貴方の紡いだ意志はこの子達にきちんと伝わり、そして繋いでくれているよ。
そして生まれてくるこの子も、きっと。
「月陽さん、安心してください。この家と月陽さんは必ず俺が守りますっぶへぁ!!テメこら猪頭何さらすんじゃボケクソが!!!」
「うるせぇ弱味噌!おい、腹のガキが生まれたら俺が継子にしてやってもいいぜ月陽!」
あぁ、なんて私達は幸せ者なんだろう。
後を追う気でいた私を許してください。
義勇、私も貴方のように何かを紡ぐ事が出来るかな。
私なりに頑張ってみるから、どうか見守ってて。
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