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「竈門君、今日はよろしくね!」

「こちらこそ!」


今日の私はついている!
なんて言ったって大好きで憧れの竈門君と合同任務なのだから。
勿論気を緩めたりはしないけど、目的地の町まではたくさんお話出来る。


「月陽さんと二人は初めてだね」

「そうだね!今日禰豆子ちゃんは?」

「禰豆子はこの前の戦いで眠っているからしのぶさんにお願いしてきたんだ」

「そっか…じゃあ、今日は私が竈門君を独り占めだね!」

「え?」


えへへ、とだらしなく緩む私は竈門君の反応を見てやってしまったと気付く。
何を言ってるんだ私は!


「な、なんちゃって…はは」

「うーん、じゃあいつも月陽さんはカナヲに取られちゃうから俺も今日は月陽さんを独占だ!」

「はぅ…!」


眩しいー!竈門君眩しいー!!
そんなに満面の笑みで言われたら私舞い上がっちゃう。
思わず照れてしまった私は両手で自分の顔を覆った。絶対今顔赤い。
竈門君にならいつでも独占されたいです。


「そうだ、折角だし名前で呼んでみよう!」

「えっ?」

「月陽、も俺も同い年だって聞いたから!」

「う、うん。炭治郎…」


しのぶ様、しのぶ様。
私今幸せ過ぎてどうしようもないのでお叱りください。でもどうして私の年齢を知っててくれたんだろう。
カナヲちゃんと仲が良いから知ってたのかな。

ちょっとだけはにかんだ笑顔で話し掛けてくれる炭治郎に私の匂いが伝わってしまっていないか心配。
だってこんなに大好きって思ってしまってるから。

カナヲちゃんに比べたら私が炭治郎と会ったことあるのは片手で足りるくらいだし、勝手に好きになって憧れてたなんて知られたら引かれちゃうかもしれないもん。

そんな気持ちとは裏腹に炭治郎は町について鬼の事を調べながら私にお菓子を買ってくれたり、お昼ご飯を楽しく過ごさせてくれた。

たまに私の頭を撫でてくれるのが、凄く嬉しい。
私はこの手がきっかけで好きになったのだから。

鬼を前にして震えながら立ち向かった私を褒めてくれた肉刺だらけの優しい手。


「月陽、行くぞ!」

「うん!」


夜、任務対象の鬼を見つけて人通りの少なくなった路地で戦闘になった。
水の呼吸を駆使して流れる様に攻撃を仕掛ける炭治郎を私も花の呼吸を使ってサポートする。

カナヲのように強くはないけど、私だってしのぶ様に稽古をつけてもらってるから。
炭治郎の足手まといになんかなりたくない。


「花の呼吸、肆ノ型紅花衣!」

「助かるっ!」

「う、うん!」

「壱ノ型、水面斬り!」


紅花衣で四肢を斬った私の後ろから飛び上がった炭治郎が鬼の頸を斬り落とした。
余りのかっこよさに着地を失敗してしまったけど、水の呼吸を使った炭治郎がかっこよ過ぎて目が離せない。
ゆっくり灰となって消えていく鬼を横目で見ながら日輪刀を鞘へ納めて一息ついた。


「月陽も花の呼吸を使うなんて知らなかった」

「カナヲちゃんには叶わないけど、私も一緒の呼吸なの」

「そんな事ないぞ。月陽も頑張ってる。お互い頑張ろう!」

「…うん!」

「さて、帰ろうか」

「そうだ、ね…っ」


褒めて貰えたことが嬉しくて、着地を失敗してた事を忘れてた。
振り向いて帰ろうとする炭治郎について行こうと右脚を出した瞬間ガクッと態勢を崩してしまった。 


「わっ、月陽!」

「……た、炭治郎」

「大丈夫、か?」


崩れそうになった身体を炭治郎が抱き留めて腰を支えてくれた。
まるで抱き締められているような感覚に炭治郎の顔を見上げたまま固まってしまう。

どうしよう、かっこいい。どうしよう、凄く近いよ。

どきどきする心臓が聞こえてしまうんじゃないかってくらい脳に響いてくる。


「…月陽は、ずるい」

「え!?」

「そんなに甘い匂いを向けられたら、俺だって…照れる」

「っ!」


私の腰を支えたまま、顔を赤くして顔を背ける炭治郎に私の心臓がもっと早く鼓動を刻んでしまう。
バレてしまった。
私の気持ちが、炭治郎に。


「ご、ごめんなさい…あの、私」

「お、俺!月陽の事が好きだから勘違いしちゃいそうになるぞ!」

「…へ?」

「いつも可愛らしい笑顔を向けてくれる月陽が、段々気になって…その、好きになったんだ。だから今日、正直嬉しかった」


いつもはきはきと喋る炭治郎とは違って、歯切れの悪い話し方。
私の腰にある腕が少しだけ強くなる。

もしかして、これって。


「炭治郎も、私の事好きで居てくれたの?」

「勿論だ!」

「嬉しい。嬉しい…私も炭治郎に会った時から好きだったの」


鍛錬のせいであまり女の子らしくない蛸の出来た手で炭治郎の羽織を握った。
嬉しくて泣いてしまいそう。


「俺達、両想いだったって事だな!」

「わっ!」

「大好きだぞ、月陽!」


歯切れの悪かった炭治郎はいつもの様に満面の笑みで私を抱き上げた。
鼻が良くなくても、今の炭治郎からは嬉しそうな雰囲気を感じる。

 
「改めて、これからもよろしく!月陽!」

「はい!」


あのね、炭治郎。
私あなたがとても大好きなの。
だからね、いつも笑ってあなたらしく居てね。

あなたの為なら私、頑張れちゃうから。




おわり

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