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目を覚ますとアオイちゃんがほっとしたような顔をして部屋を出ていった。
気を失う前の、気持ち悪さはいくらかマシになってる。

周りを見渡せば義勇の家に居るから、きっと誰かがアオイちゃんを呼んできてくれたのかもしれない。
不甲斐ない気持ちになりながら身体を起こすとドタバタ走る音に懐かしい気持ちになる。

申し訳なくなったり、懐かしい気持ちになったり情緒が安定しない。
水柱のお嫁さん失格ね、とため息をつく。


「月陽さぁぁあん!!大丈夫ですかぁあもぉおおびっくりしたんだからぁぁぁ」

「こら善逸!廊下を走るんじゃない!煩くするんじゃない!」

「だってさぁ!だってさぁー!!たんじろー!」

「おい、大丈夫か嫁!」

「あなた達煩いです!静かにと言いましたよね私!」


空いた襖から善逸君、炭治郎君、伊之助君、そしてアオイちゃんと禰豆子ちゃんが顔を出す。
この家にこんなに沢山の人が居るのはいつぶりだろう。
皆大変なはずだと言うのに私の為にこんなにたくさんの人がお見舞いに来てくれてる。

おかしくなってしまった私の涙腺はまた沢山の涙がこぼれ落ちてきた。
私達はこんなに人に恵まれている事を今更になって感じる。

義勇、ねぇ見てる義勇。
貴方の後輩たちはこんなにも優しい。


「ひぃぃどうしたの月陽さん!どこか痛いの?!」

「ごめんね、皆。違うの、嬉しくて」

「…月陽さん。敢えてここでお話があります」


鼻水まで垂らして私以上に涙を流す善逸くんの頭を撫でていればアオイちゃんが居住まいを正して、布団のそばに正座した。

不摂生を怒られるのだろうかと私も正座しようとすれば禰豆子ちゃんにそのままで大丈夫ですよと肩を抑えられる。


「率直に言いますね。月陽さんはご懐妊されてます」

「…え」

「えーーーー!!!うっそぉ!!?」

「お、孕んでたのか」

「善逸は煩いし伊之助はもう少しまともな言い方できないのか!ってえー!!!??」


アオイちゃんと禰豆子ちゃんは男の子組に小さく苦笑して驚く私が一番反応が薄かった気がする。
でもそんな事どうだっていい。
今、アオイちゃんはご懐妊と言った。


「…義勇の子」

「えぇ。しっかりやる事やっていらっしゃったんですね、あの方も」

「す、すみません…」

「アオイちゃんは責めてませんよ」


ふふ、と笑って禰豆子ちゃんが背中を撫でてくれる。
鬼の時の妹のような振る舞いはどこか、人に戻れた禰豆子ちゃんは炭治郎君よりお姉さんのような雰囲気を醸し出している。




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