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そんな後藤の気持ちも露知らず、空いている部屋に入った月陽は冨岡の膝の上に甘えるように座っていた。


「義勇さん、よく私が食堂に居るって分かりましたね」

「隊士に聞いた」

「ふふ、そうなんですか。そう言えばさっき後藤から聞いたんですけど、私と義勇さんが同性愛者だって噂が立ってるらしいですよ」


おかしいですよね、そう言って笑った月陽の唇に自分のを重ねた冨岡は穏やかに微笑み返す。
膝の上に跨った月陽の腰を優しく撫でながら頭を自分の胸に引き寄せる。


「同性愛者か」

「私の男装がバレてないと言うことですよ。そっちのが気が楽でいいです」

「…そうか」


月陽は女である。
しかし女だからといって下に見られるのを嫌った彼女は性別を偽り鬼殺隊の一員として生活していた。
産屋敷耀哉は本来の性別を知っているし、別段何も言ってこないのでそのままを突き通していたのだ。

しかし任務でたまたま救援に来てくれた冨岡に女だとバレ、お互いいつの間にか惹かれ合った二人は恋仲になっていた。

同性愛者と言うこと以外は噂通りなのである。


「義勇さん、今日は任務あるんですか?」

「いいや。見回りだけだ」

「じゃあ見回りが終わったら義勇さんのお家に行ってもいいですよね」


冨岡の胸板に擦り寄る月陽の頭を撫でて、肯定するよう頭頂部に唇を落とす。
そんな冨岡の行動に更に気分を良くした月陽はお返しとたくさんの口付けを降らせた。


「…そう煽るな」

「煽ってません。愛情表現です」


冨岡の跳ねる髪を撫で付け首に腕を絡ませた月陽の表情は他の隊士といる時は絶対に見られない顔で、その事に優越感を感じる。


「お前が女と言う事を知ってるのが俺だけというのは気分がいい」

「ふふ。お館様も知ってますけどね」

「お館様はあまね殿がいる」

「そういう問題ですか?」


こくりと頷いた冨岡は月陽の短い髪を触り、毛先まで手を滑らせる。
項を撫でれば擽ったいのか肩を竦める彼女の首筋の匂いを嗅ぐ。
そうすれば男には無い良い香りがするのは至近距離で接する冨岡だけが知っている事で。


「くすぐったいです、もう」

「これは俺だけの秘密だな」

「何がですか?」


ふ、と息だけで笑う冨岡に首を傾げる月陽に何でもないと首を振る。
本当は甘えたな事も、布団の中では色っぽい艶やかさがある事も全て冨岡のみが知っていて産屋敷さえ知らない事だ。


「それにしても秘密って何だか凄く興奮しますよね」

「…痴女」

「失礼な!」

「冗談だから安心しろ」


頬を膨らます月陽を強く抱きしめ俺も同感だと耳元で囁く。
その意図を理解した月陽が耳を赤くして更に身体を密着させる。


「…義勇さん、大好きです」

「あぁ」

「秘密がバレても側に居させてくださいね」

「勿論だ」


お互いの額を合わせまるで誓いをするかのような二人はこの後、たまたま部屋の掃除に現れた給仕に見つかったとか見つからなかったとか。



おわり。
当社比ゲロ甘冨岡さん。

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