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藤の家についた俺は月陽宛に手紙を書き、自分の鴉の足へ彼女の両親が書いた手紙と共に括りつけ飛び立たせ風呂に入った。

あの男が旅行へ行ってる間に手紙を渡しておけば、少しでも早く荷造りの準備が出来るだろう。
後は俺が帰ってきたあの男たちを黙らせればいい。
金で解決できないのであれば実力行使だってしてもいいと思っている。それ程のことを今まで月陽にしてきたんだ。

濡れた髪が乾いたあと、休む為に出された布団へ入り目を閉じる。

鬼殺隊と知れば反対されると思ったが、彼女の両親は微笑んで俺を受け入れてくれた。
いつ死ぬかも分からないと説明もしたが、鬼がいる限り、人である限り死は逃れようも無いものだと言ってくれた。

月陽も彼女の両親も強く立派な人物であると思う。
錆兎や蔦子姉さんのことをいつまでも引き摺っている自分とは大違いだ。

体を起こし、夜を照らす月を眺める。
月陽に早く会いたい。そして早く彼女を安心させてやりたい。


「…強くならなければ」


俺を兄弟子と慕ってくれる炭治郎と禰豆子も守ると誓った。
段々と自分の周りに人が増える事を怖いと思っていた筈が気付けば俺の周りにはこんなにもたくさんの人が居る。

少し風に当たろうと縁側に出て月を眺め、一昨日一夜を共に過ごした月陽を思い出す。
必死に俺の名を呼び、愛してると腕を差し出した姿は今思い出しても可愛らしかったと頬が緩む。
この件が終わればいつでもとはいかないだろうが、彼女の生活にも安寧が訪れる。

日々の生活に怯えて震える事もなく、家族ともいつでも会えてまた前のような表情豊かな月陽に戻れるはず。


そう思って目を閉じながら夜風を感じているとバサバサと慌ただしい音が聞こえた。
少し前に飛び立ったはずの自分の鴉だ。
足には手紙がついてはおらず、月陽の元へ辿り着いたのだろうが急な任務でも入ったかと立ち上がり止まるための腕を差し出す。


「どうした」

「月陽!鬼ニ襲撃!義勇、急ゲ!」

「っ!?」


何故だ。
何故こうも鬼は俺の邪魔をする。
脳裏にちらつく涙を流す月陽の姿に舌打ちした。

急いで隊服に着替え藤の家の者へ出立する事もせずに屋敷を飛び出した。
堪えてくれ、頼むから。

心臓を鷲掴みにされたような気持ちのまま月陽が待つと言った藤の家へと急いだ。
俺の側を飛ぶ鴉へ先に月陽の元へ行くよう伝える。

間に合ってくれ。
月陽はこれから幸せになるべき人間だ。

その願いも虚しく、やっと藤の家に着いた俺は鬼によってぼろぼろにされた屋敷を目の前に立ち尽くした。



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