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それから俺は炭治郎の元へ向かい、共に鬼を討ち倒した。
今回の鬼は寄生型だったらしく、たくさんの鬼を操っていたため炭治郎たちだけでは困難と判断したのだろう。

結局明け方まで寄生が外れた鬼の後処理をする事になった。


「冨岡さん、お忙しいのにありがとうございました!」

「あぁ」

「あの、何だか冨岡さんから嬉しそうな匂いと女性のような優しい匂いがするんですが聞いてもいいですか?」

「は!?水柱から女の子の匂い!?ちょっ、えっ!はぁぁぁ!?」

「雌の猪でも食ったか?」

「…答える義理はない」


やかましい三人に耳を塞ぐ。
こいつら三人を見ていると鱗滝さんの所で修行していた弟弟子や妹弟子たちを思い出す。
日中ゆえ禰豆子は箱の中で寝ているようだ。


「え、まじかよ水柱…さん」

「どうした?善逸!」

「恋してる音聞こえぶっふぁーん!!」

「うぉぉぉすっげー!」


俺の心臓に耳を当てるとまるで怪物でも見たような顔をした我妻を背負投で遠く飛ばしてやった。
嘴平は興奮したように我妻を同じ様に投げ飛ばしている。


「冨岡さん、恋人が居るんですか?」

「…まだ恋人じゃない」

「まだという事はこれからなるんですね!!!」

「だといい」


目を輝かせた炭治郎に頷くと起きていたのか禰豆子の入っている箱からカリカリと引っ掻くような音がした。
ふと月陽を思い出して一人で待っているであろう藤の家の方角へ顔を向ける。

精神的に参っていたようだが、一昨日は一緒に飯も食べたし出立する前に3食口にするよう約束もしてきた。
健気に待ってると言って嬉しそうな顔をした月陽を思い浮かべる。


「冨岡さん、とても嬉しそうな匂いがします。その人の事凄く好きなんですね!」

「…そうだな」

「たーんじろぉー!助けてぇー!!」

「俺はもっと飛ばせる!紋逸逃げんじゃねぇ!」

「コラ伊之助!すいません、冨岡さん。救援ありがとうございました!」

「あぁ」


頭を下げた炭治郎に頷くと笑みを浮かべて未だに投げられている我妻の元へ走って行った。
夜中駆け回ったせいか、服も汚れているし休む為に別の藤の家がある街へ向かう事にする。
身を綺麗にしたら月陽の実家に行き、現状の説明をしなくてはならない。

あんな所に彼女を置いておくのは嫌だが、両親の件もある。
これからは俺が保護する事の説明もしなくてはいけない。多少自分の説明には自信がないが、月陽から預かった手紙もある事だしきっと大丈夫だろう。
未だに騒ぎ続ける炭治郎たちの声を背中に歩き出した。


幸い藤の家はすぐ近くにあり、風呂を借りて洗濯してもらっている間持ってきた私服に袖を通す。
日輪刀を腰に差し、明るい町中を歩いて土産を探した。

月陽の実家には饅頭を、彼女には


「そこのかっこいい兄さん!彼女への贈り物かい?」


彼女ではないが、想い人ではあるためとりあえず小間物屋の主人に無言で頷いた。
寡黙そうな兄さんだねと言われたが、西洋の小物も置いてある店に興味を引かれて整えられた商品を見渡す。


「兄さん、もしかして贈り物って馴れてないのかい?」

「…あぁ」

「ならこれならどうだい?口紅って言って、紅と一緒なんだが今の女達にはこういう洒落た装飾がいいって人気なんだよ」


どれがいいものかと悩んでいる俺に無骨な手のひらに置かれた口紅というものを見せてもらう。
月陽は化粧っ気がなさそうだが、紅くらい差してくれるだろうかと桃色の物を取った。


「桃色って事は化粧っ気がないお嬢さんかい」

「…分かるのか」

「そりゃあ何年も小間物屋やってりゃあな!」

「そうか」

「しかしあんたみたいな堅物そうな兄さんを落とすなんて、たいしたお嬢さんだ」


豪快に笑う主人はまるで隣に月陽を見ているかのようだ。
不思議とやり取りが嫌ではないと感じながら、桃色の紅を買い月陽の実家がある街へと向かった。


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