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手を引っ張られてつれて来られたのは冨岡先生の車だった。
後部座席に冨岡先生ごと押し込まれた私は体制を崩しながら、ふんわり香るいい匂いに顔をにやけさせた。
こら、冨岡先生ドン引きした顔しない。



「…お前は、どうしてこうなんだ」

「こうとは?」

「分かってるだろう」

「うーん。冨岡先生が好きだから」



ため息をつかれながら私を見る先生に、さも当たり前の事を返すともう一度ため息つかれた。
さすがの私も少しイラッとして、膝の上に置かれた手に触れる。

本気なんだよ、先生。



「私先生としても冨岡先生が好きだけど、冨岡義勇さんとして男性として好きなの」

「…お前のそれは勘違いだ」

「なんで?何を勘違いしてるっていうの?」

「年上で、車を持っているだけで今の永津くらいの女子達は惹かれてしまうものだ」



冨岡先生に触れている私の手を少しだけカサついた手が優しく解いていく。
違う、違うよ先生。

ゆっくりと話されていく冨岡先生の手の暖かさが離れそうになった時、もう一度今度は両手で握った。



「だったら宇髄先生でも煉獄先生でも私は良かったって言いたいの?」

「……」

「私は冨岡先生の年齢や車に惚れた訳じゃない。貴方だから好きになったの!禁断の恋に憧れてる訳じゃないよ」



だからどうか、この気持ちだけは否定しないで。
そう願いを込めて少しだけ強く冨岡先生の手を握った。

受け取ってもらえなくてもいい、それでも好き。
小さい声でそう言ってしまった瞬間顔が熱くなって涙が出てきた。
違う、泣き落としなんて小細工したい訳じゃないのにどうしてか涙が止まらない。
思わず両手を離して涙を拭こうとしたら、掴んでいたはずの私の手が逆に掴まれていた。



「ご、ごめんなさい。違うの、ずるい真似したい訳じゃなくて」

「お前の気持ちは冗談でも気の迷いでもないのか」

「そうだよ!だから、この涙はなんか感極まったというか…とにかく手を離してくださ」



じっと深海の海のような瞳が覗いてきて、一気に羞恥心が込み上げてきた私が思わず叫びそうになった瞬間頬を伝った涙が何かの感触に奪われた。






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