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「あれ、冨岡先生」

「永津か」

「奇遇ですねー!」


学校が休みの日、私はのんびり街を散歩していた。
別にこれと言って誰かとの予定もないけど、化粧をして少し大人びた格好をしていた自分を心の底から褒めちぎった。

私は冨岡先生に恋をしているのだ。
しかも目の前に私服を着た冨岡先生の後ろ姿を見かけて背後から飛びついた。

運良すぎて今日死ぬのかな?なんて考えたけどとりあえず気にしない。

冨岡先生は人の気配に敏感だ。
きっと私が走り寄ってきた事くらい分かってたからこそたいした反応もせず受け止めてくれたんだと信じたい。



「お出かけですか?」

「あぁ」

「へー!あ、もしかしてこれからデートだったり?」



さり気なく探る私の嫌な女振りは自分でもうんざりする。
でも冨岡先生はかっこいいし、もしかしたら彼女さんの一人や二人居ても疑問はない。

あわよくばこのままデートに持ち込みたい私としてはまず確認して置かなければならない事だ。



「……」

「だって先生かっこいいし、からかってる訳じゃないんでその嫌そうな顔をやめてください」

「そういうのは居ない」



よっしゃーーー!!と心の中でだけガッツポーズ。
居ないということは私にもチャンスはある。
そのまま背中に抱き着いていた腕を冨岡の腕に絡めて離さないアピール。

若干上半身が私とは反対側に傾いたのは仕方ないとしよう。
まだまだ成長途中(予定)の胸を押し付け顔を近づけてみたら、冨岡先生めちゃくちゃいいにおいした。



「ねぇねぇ先生。だったら私とデートしませんか」

「断る。生徒とデートなんてしてみろ、大問題だ」

「じゃあ義勇さんって呼ぶから大丈夫!」

「何が大丈夫なのかちっとも分からん」



離れようと振りほどかれそうになる腕に無理矢理手を恋人繋ぎして、空いた手で冨岡先生との距離を無くす。
これが最後のチャンスだと思って精一杯頑張ってみる。
だって明日死ぬかもしれないもん。



「義勇さん、ここで揉めてると人目につきますよ!」

「…っ、こっちへ来い」



第一関門突破!
今度は私が冨岡先生に引っ張られる形になり、ちょっと優越感。
指導以外で冨岡先生から触れられるなんて早々無い事だ。





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