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「一度日輪刀で壁を傷つけられるか試してみる。悪いが耳を塞いで…」


これ以上月陽を見る事の出来なかった俺はすぐに目を逸らして日輪刀に手を伸ばし立ち上がろうとした。

しかしドンという柔らかい衝撃と、目の前にある綺麗な黒髪に阻止されてしまう。
月陽が俺に抱きついてきたからだ。


「月陽、安心しろ。お前に刃が当たる事は…」

「私も好きです。だから、してください」

「そ…んな、気を使わなくて」

「ずっと好きでした。幸せそうに鮭大根を頬張る貴方が、私にたまに微笑みかけてくれる貴方がずっと…」


いつも柔らかく話し掛けてくれる月陽の声は緊張からなのか、少しだけ固かったが明確な意思を表していた。


「…それは、本当か」

「はい…っ」

「月陽、こっちを向いてくれないか」


月陽は何をするのか分かったのか、瞳を閉じたまま顔を上げてくれた。
化粧も何もされていない筈の柔らかい唇にそっと自分の唇を重ねる。

触れ合った瞬間、俺の羽織を掴んだ手が少しだけ動いただけで必死にしがみついてくれている姿が愛らしくてそっと腰を引き寄せた。


「好きだ、月陽」


啄むような口づけの間にもう一度思いの丈を伝える。
羽織をより一層強く掴んだ月陽がそれに答えてくれるかのようで嬉しくなった。

何度も何度も唇を味わい、苦しくなって開いた口にそっと舌を差し入れる。


「んっ…」


僅かに身震いしたものの、それが拒否から来るものではないと感じた俺は更に気分が乗り引っ込みがちな月陽の舌を絡めとる。

水音が静まり返った部屋に響き、たまに身動ぎするような布擦れの音が聞こえて変な気分にさせた。


「ん、っ…はぁっ…」

「っ、月陽」


カチャリと何かが開いたような音がしたが関係なかった。
今この時をまだ堪能していたいという欲求だけが俺を支配して、そっと床に押し倒しながら口づけを続ける。

時折洩れる月陽の吐息が厭らしくてつい身体を這うように手を動かしてしまう。

これ以上は早すぎると分かっているのに止まらない。


「月陽…」

「と、みおかさっ…」


息が続かなかったのか、胸板を叩いた月陽にゆっくりと唇を離すと銀糸が引いて更に官能的な雰囲気に酔ってしまう。


「はっ…はぁっ…」

「…………っ、すまない」


想像以上に長い間無理をさせてしまったのか、息を乱して潤んだ瞳に見つめられやっと我に返った俺は急いで目を逸らした。
想いを重ねたばかりだと言うのに俺は何をしようとしていたのか。

謝罪を口にして互いの唾液で塗れた月陽の唇を袖で優しく拭いてやる。


「ご、ごめんなさっ…わたし、初めてで」

「いや、月陽が謝ることじゃない」

「冨岡さん、口づけ上手だから…申し訳なくて」

「…待て。俺も口づけをするのは初めてだ」

「えっ!」


何か勘違いしていそうな気がしてそれを否定したら大層驚いた顔で俺を見た。
口づけだけでは無いが、恋人という存在だって俺にとって月陽が初めてなんだ。
上手いも何もあったものじゃない。
ただ欲望のままに月陽の口内を荒らしていだけだ。


「…そ、そうだったんですか。冨岡さん、素敵だからてっきり」

「色恋に興味は無かった。月陽に出逢うまでは」

「そう言ってもらえると、嬉しいです」


冨岡さんの初めてだなんて、と頬を染めた月陽に雄としての俺がむくりと顔を出してしまいそうになるのを何とか留める。


「兎に角、外に出ないか」

「えっ、開いたんですか?」

「扉が開くような音がした。しかし出た先に何があるか分からない。俺から離れるな」

「…はい」


そっと抱き起こせば更に頬を染めた月陽に胸が高鳴る。
ここでは駄目だと自分に言い聞かせて、日輪刀を構え外に出ればそこは俺の家だった。

鬼の気配すらしない。


「…どういう事だ」

「冨岡さん、これ…」


ふと月陽が手に持っていた紙を渡してくる。
その内容を読めば何とも意味不明な言葉が書いてあった。


【ご都合血鬼術】



おわり。

ただの自己満足楽しかった()
終わりが雑なのはあえての仕様です!雰囲気ぶち壊してすみません。笑
因みに出られない部屋のお題内容はツイ○ターの診断からお借りしました!

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