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「私、ちゃんとお母さん頑張るよ」

「あぁ」

「ちゃんと生きて、あの子の成長を見届ける」

「頼む」

「炭治郎君たち、鬼殺隊の皆の成長も貴方の代わりに見届ける」


もう抱き締めている体は殆ど色をなくしてきている事は分かっていた。
もう義勇と話す事ができない事もなんとなく分かっていた。

だからね、と言葉を続ける。


「義勇、私が頑張ったら…迎えに来てね」

「…あぁ」

「愛してるわ、義勇」

「俺も、愛してる」


義勇は、私の額に口付けをして消えた。
そして私は目を覚まし、隣に寄り添うよう置いてあった義勇の日輪刀を抱き締める。

顔や枕が涙で濡れていた。

痛む下半身に堪えながら襖を開けてみると、寝ている勇水を覗き込む何個もの笑顔が囲んでいる。

そこには元柱の方々も、これからを担っていく柱の面々も居る。
そしてそれを支えていくであろう隊士の人達や蝶屋敷の子達。

私は一人じゃない。
義勇だってずっと側で見てくれていたって言ってた。
ただただ喪失感に飲まれ、こうして私達を支えてくれていた存在に気づく事が出来なかっただけ。

もう二度と私は自分が一人だと嘆く事もないだろう。
私達の周りにはこんなに愛する人たちがいるのだから。


「あ!月陽さん、起きちゃだめじゃないですか!」

「え、あ…ごめんねアオイちゃん」

「全く…そんな顔してたら勇水が不安になってしまいますよ」


襖から覗く私にいち早く気付いたアオイちゃんが声を控えめにしながら近寄ってくる。
そして、皆の目から隠すように手拭いで顔を拭いてくれた。


「今皆でどっちに似てるっていう話をしてたんです」

「え、どっちだった?」

「冨岡さん派と月陽さん派で今議論をしている所です」

「ふふ、何それ」


私個人としてはどちらに似ていたって構わないのだけど、我の強い面々の事だからきっとあぁだこうだと言い合っているのだろう。


「冨岡さんに会えたんですか」

「…アオイちゃん」

「私も文句の一つも言いたかったです。貴方が残していった奥様はおモテになるのでお覚悟の上なんですよね、って」

「え!?そんなこと無いよ!」


人差し指を立てて捲し立てるように言うアオイちゃんの言葉に首を振って否定する。


「月陽さんが知らないだけで、冨岡さんは結構露払いに勤しんでいたんですよ」

「でも私、異性としては義勇しか愛せないし…」

「あーあーしのぶ様もこの立ち位置でいらっしゃったんだろうな。何となく冨岡さんに八つ当たりする気持ちが分かりました」

「え!」

「なんて、半分は冗談です。さて、体を拭きましょう。食べれるのであれば食事を用意しますからね」


勇水は禰豆子ちゃんがいるので大丈夫でしょう、とアオイちゃんは私を布団に戻し蒸した手拭いを用意してくれていた。

ふと閉められていく襖の向こうで炭治郎君が起きた勇水に万華鏡を渡しているのが見えた。
少し先の未来、勇水が万華鏡に夢中になってばかりで私が抱き着いて構ってと抱き着いてる光景が待っているのかもしれない。



言い訳させて下さい→

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