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「と、冨岡さん…怒ってますか?」

「いや。予定外ではあったが」

「そう、ですか。ねぇ、冨岡さん。私達本当にお付き合いしたってことでいいのでしょうか」

「…勿論だ。」


不安げに自分の手を握った月陽を安心させるように抱き寄せ耳元で囁く。
気配がした木陰にはもう誰も居ない。


「こんな形になってすまない。だが、お前を想う気持ちは偽りはない」

「冨岡さん」

「月陽さえ良ければ継子としてだけじゃなく、俺の側に居てくれないか」

「っはい、喜んで!」


飾り櫛を渡してから照れたり泣きそうな顔だったりを見せた月陽だったが、やっと冨岡の見たかった笑顔になり思わず強く抱き締めた。

計画という計画を立てていたわけでは無かったが、結果的には功を奏して月陽と気持ちを共に出来た。

嫌われていないという自負はあったが、昨日のように仲間達と飯を食い買い物に行けた事も良かったと思える。
覗かれていた事を省けば。


「と、冨岡さん!外ですし…その、恥ずかしいです」

「なら屋敷だったらいいのか」

「…そっちなら、いいです」


冨岡的にはまだこのままで居たかったが、近くにまだ自分を除いた柱が居るような気がしたので了承して屋敷の門を潜る。
そして門の扉を閉める直前に口だけで何かを告げると、今度こそ閉ざされた。


「ありゃ確実にバレてたな」

「冨岡の婚約を見届けられるとはよもやよもやだな!うむ、実に目出度い!」

「冨岡さんの好きな子って炭治郎の同期だったんだ」

「つか何で俺があんなもん見なきゃなんねェんだよ!」

「勝手についてきたのは貴様だろう不死川」

「冨岡さん男らしかったわ!」

「一瞬変な空気になった時は驚きましたけどね」

「うむ…」


冨岡達が屋敷の中へ入っていくのを見届けると、最初に隠れていた場所からまた少し離れた場所で8人の柱が道へ姿を表す。
そして冨岡の屋敷に背を向け各々が話しながら歩き出した。


「しっかし"感謝する"なんて言われるとは思わなかったな。仕方ねぇ、今度派手に祝ってやろうじゃねぇか!」

「お館様にも報告せねば…」

「悲鳴嶼さんってそれ何の涙なの?」

「伊黒さんも冨岡さんに先を越されてしまいましたね」

「…何の話かさっぱり分からんな。そんな事より甘露寺、最近ここら辺で新しい甘味処が出来たと聞いたのだがどうだ」

「本当?行きたいわ!今日の事も話したいし、何だか私も伊黒さんと一緒に居たい気分なの」

「そ、そうか。ならば見回りまでの間で良ければ共に居よう」

「アァ?何だコイツらもぶっ」

「不死川さん、宜しければ飴をどうぞ」


それぞれがそれぞれに帰っていく平和な夕刻。
次の日から水柱に妻が居たという噂が隊士の中で流れたと言う。




おわり。
これを夢小説と言っていいのか分からないくらいの平和な柱達を重視したお話。
本誌が辛すぎて逃避した末に出来ました。
たまにはこうして変な所で一丸となって欲しい願望。

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