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「これ何かいいんじゃないかしら!」

「月陽さんは可愛らしい顔ですし、桃色なんか似合うと思いますよ」

「……………」


町に出て、着いたのは女性専門の雑貨屋だった。
キラキラと輝く華やかな簪や、飾りの多く付いた髪留め、外国から輸入した化粧品などが置いてあり男三人は最早蚊帳の外である。


「…なぁ」

「何だ。今俺は楽しそうな甘露寺を見ているんだ、くだらん事だったらその無駄に太い腕を折るぞ」

「派手にやる気満々じゃねぇか。いや、お前も冨岡もだがもし甘露寺や月陽と付き合えたら性交すぶふっ」


至極真剣な顔で宇髄が話し始めたのを伊黒と冨岡が屈強な腹筋を全力で殴って阻止する。
言葉は遮られたが本人は特に気にした様子もなく殴られた腹筋を擦った。


「きっ…さまは昼間から何を言っている!!低脳にも程があるぞ!!切腹してしまえ!」

「……頭は大丈夫か」

「逆に俺はお前たちの方の頭が心配だけどな。そんな事も考えてねぇで好きだとか言ってんのか」


まだ店で楽しそうに雑貨を見ている二人を見ながら宇髄は両肘を二人の肩に乗せて耳に顔を寄せた。


「地味な妄想だけじゃつまらん。派手に脳内で脱がせてみろ、生まれた姿のそいつらに何を贈る」

「「……………」」

「よぉく考えろよ…そして直感で選べ。それがお前らの性癖だ」

「あなた方は往来で何をお話しているのでしょうか」


次第に顔の赤くなった二人に気を良くした宇髄が更に追い打ちを掛けているとひんやりとした声が三人の後ろから聞こえてくる。


「こ、胡蝶!これは鍛錬だ、鍛錬!」

「お付き合いもしていない女性の裸体を想像することがですか?」

「…俺は断じて何も想像してない。想像しようとも女の体なぞ知らんからな。本当に貴様は節操のない男だ宇髄。ついでに冨岡も」

「!?」

「あらあら良かったですね、伊黒さん。甘露寺さんが小物に夢中で。冨岡さんもまさか考えてなんて居ませんもんねぇ?」


肝が冷えるような笑顔で詰めてくる胡蝶に伊黒も冨岡も冷や汗をかいた。
甘露寺は店主と話し込んでいるのかこちらの話が聞こえては居ないようだが、血の気の引いた伊黒はいち早く離脱し距離を置く。


「てめっ、さっき顔真っ赤にしてた癖に一人だけ逃げんじゃねぇ!」

「俺も、想像していない」

「お前ら派手に裏切りやがって!!」

「宇髄さんは後でお話しするとして、冨岡さん。貴方が月陽さんに贈り物をしたいと言ったのですからきちんと自分で選んできたらどうです?」


そうため息まじりに諭され、中へ入ってみる。
宇髄から貰った助言は思考の端へ追いやり、キレイに並べられた小物達を見比べた。

どれも冨岡には同じような物としか思えず、外で待っている仲間に首を振ろうとした時白と水色の波紋が広がる柄の櫛を見つけそれを手に取る。


「おいまさか冨岡、櫛を贈るのか?」

「…これがいい」

「貴様にしては悪く無いが、その意味は知ってるのか?知らないとすれば相当…」

「まぁまぁ、宇髄さんに伊黒さん。冨岡さんがこれで良いと言うのですから」

「きゃー!冨岡さんてば大胆ね!」

「?」


手に取った物を見て次々に集まる仲間に冨岡はただ首を傾げた。
なぜそんな反応をされるのか分からないまま、兎に角この櫛が気に入ったので贈り物用に店主に包んでもらう。

月陽は炭治郎と任務な為渡すのは明日の午後になるかもしれないが、何となく受け取った時の笑顔が想像出来て満足そうにそれをそっと懐にしまった。


「良かったですね、冨岡さん」

「あぁ、感謝する」

「どうしましょうどうしましょう!私までドキドキしてきたわ…」


周りが自分以上に盛り上がっているのも気にせず、先程しまった櫛に服の上から手を当て明日月陽が帰ってくるのが待ち遠しいと空を見上げた。


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