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「月陽さん!もう少しです!いきんで!」
「っ、ぅ…んんんん!はっ、あ!」
目の前がチカチカする。
あれから目まぐるしく日は経って私は禰豆子ちゃんに手を握ってもらい、アオイちゃんがお腹に掛けられた布の向こうで励ましてくれている。
もうすぐ、もうすぐ会える。
――義勇。
最後の力を振り絞り、力一杯いきむとズルリと何かが出た感覚と共に力強い泣き声が部屋へ響いた。
「月陽さん、おめでとうございます。男の子ですよ!」
「は、はっ…おとこのこ…」
「っ、月陽さん。おめでとうございます!」
生まれた赤ちゃんを手ぬぐいで綺麗にしてくれているアオイちゃんも、涙ぐみながらずっと手を握ってくれていた禰豆子ちゃんも顔いっぱいに笑顔を見せてくれる。
未だに息が切れている私に柔らかい布で包まれた我が子が手渡された。
「っ、あぁ…ありがとう」
胸が一杯で、涙が溢れて止まらない私が言えたのは感謝の一言だった。
生まれて来てくれてありがとう。
手を握って励ましてくれてありがとう。
この子が生まれやすいように導いてくれてありがとう。
そして、襖の向こうで雄叫びを上げたり泣きながら喜んでくれてありがとう。
「これから、よろしくね…勇水」
「勇水君、素敵な名前ですね」
「でしょう?」
小さな小さな手を握ると、倍以上の力で握り返してくれたこの子に多くの幸がありますように。
名前はもう決めていた。とても単純なものだけど、勇敢な水柱の子だから。
縫合が終わり、衣服を整え襖を開けると涙や鼻水で顔を濡らした炭治郎君達がいた。
義勇、見てるかな。この子の誕生にこんなにもたくさんの人が涙を流して喜んでくれてるよ。
出来ることならこの場に貴方もいて欲しかったけど、きっと見守ってくれていたよね。
ほら、生き残った柱の方々もこの子に会いに来てくれたの。
炭治郎君たちの後ろでちらりと見えた柱の人達。
「ほらほら、月陽さん。泣くのは終わりにして、少し休んでください」
「アオイちゃんだって泣いてる」
「う…で、でも月陽さんは今体力を回復する事に専念して下さい!勇水くんは私達が見ていますので、今はゆっくり休んでください」
「えぇ…でももう少し勇水と…」
「この後勇水君は体重を測ったり身長を測ったりするので」
「ほら、お兄ちゃん達も部屋から出るよ」
勇水はアオイちゃんが丁寧に抱き上げて立ち上がってしまう。
しかし生まれたばかりの勇水はやる事が沢山あるみたいだし、私は寂しい気持ちを押し殺して一人になった部屋に再び寝転んだ。
出産は自分が想像していた以上の疲労だったようで、意識を失うように眠りについた。
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