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会話が途切れ無惨が手を振り上げる。

私達は一斉に散って各々攻撃を分散させつつ間合いを測りながら攻撃を受け流した。


「ぐっ、」


重くて、鋭利な管は弾くだけでも手が痺れる。

流石の義勇さん達も厳しそう。
それでも皆が合流するまでの辛抱だ。
かー君が居ないということは誘導する為に飛び立った筈で、そうすれば悲鳴嶼様達ももう直ぐ合流出来る筈だから。
私は一足先にここへ落ちてしまったけれど。


「炭治郎!?」


出方を伺いながらどこか気持ち悪い攻撃の中隙を見つけようとしていた矢先、炭治郎が無惨へ近づいて行く。
奴に焦っている様子は無い。


「っ駄目!」


庇う為に炭治郎へ向かった義勇さんの援護に回る。

見間違いじゃ無ければ炭治郎は片目をやられた。
何とかして守ってあげなくてはと思うのに私では彼を抱えながら走れないし下手をすれば二人で死ぬ。

ここは義勇さんに任せるのが一番だと背後を確認した瞬間すぐ目の前に攻撃がやってくる。


「霜月!」


弾くのが返って負担になるのであれば凍らせてしまえばいい。
しかしまた嫌な動きを見せた管に空振ってしまう。

アレに近寄られると変な感覚になるのはどうしてだろうか。


「っ、義勇さん!!」


素早く炭治郎をその場から救い出した義勇さんの姿に管の攻撃を躱しながら胸の内を撫で下ろす。

間合いを詰めるなと説明する義勇さんに無惨は私を一瞬見て口を開いた。


「時間稼ぎ…夜明けまでか?光届かぬこの城の中。柱四人で」


四人という言葉に全員が眉を寄せた。
今ここに居る義勇さんと私、そして不死川様と悲鳴嶼様。
それにまだ小芭内さんと蜜璃さんは生存している筈だ。

鴉から連絡が来ていないのだから。


「縞の羽織りの柱と女の柱は既に私の部下が殺したようだぞ?」


目を見開き私は一瞬立ち止まる。
嘘だ。
小芭内さんも蜜璃さんもやられる訳がない。

少し捻くれてる人だけど、約束はちゃんと守ってくれる小芭内さんが死ぬ訳無い。

蜜璃さんだってとっても強い。
彼女の身体能力の高さも実力だって、柱たる強さがある。


「嘘を言うな!」


再び攻撃を開始した無惨に叫んで日輪刀を構えた。


「終ノ型 十六夜の舞」


まだ序盤の今、消耗をしたくはないけどそんな事は言っていられない。
少しでも手数を減らして炭治郎への攻撃集中させないようにしなくては。

深く呼吸をして体温と脈が上がっていくのを感じながら炭治郎の前に出て触手を斬り落とす。


「無駄だ」

「っ!?」


日輪刀が一際太い管に跳ね返され動きが止まってしまう。

反動で手が痺れ後ろへ下がった瞬間義勇さんの炭治郎を呼ぶ声が聞こえた。

私もどうにかそちらへ向かおうと身体を反転させるけど間に合わない。


「やだ、やだ!炭治郎!」


もう若い命を散らせたくない。
禰豆子が不在の今、私達があの子を守らなくてはいけないのに。


自分の背後にも迫る管に目もくれぬまま手を伸ばした。


「月陽!」

「っ、」


私を横から連れ去った義勇さんへ振り返る。
ふとその奥から二つの気配が近寄ってきているのに気付いて瞬きをした。


「やめなさいよー!!!」


天井から出てきた蜜璃さんが無惨へ攻撃を仕掛けると同時に小芭内さんが倒れていた炭治郎を抱えてその場から遠ざかる。

無惨の言葉なんか信じてなかったけど、二人の姿に安堵して義勇さんの手をそっと握った。


「手応えありっ!」


華麗に着地した蜜璃さんの攻撃が効かず驚いた表情をしていたけど、優しく降ろしてくれた義勇さんも少しだけほっとしたような顔をしている。

そんな私達とは逆に無惨は眉を寄せて声を荒げた。


「何をしている鳴女!!」


怒声が室内に響き渡り、その間にもう一度刀を構え攻撃に備えた。

不意に愈史郎君の声が聞こえたような気がして上を見上げた瞬間、城が揺れて隣りに居た義勇さんが私を抱き寄せる。


「…愈史郎、くん」

『俺達から珠世様を奪った事、後悔して跪け!!今からお前を地上へ叩き出してやる!!』


悲痛な叫びに私は唇を噛みながら抱き寄せてくれる義勇さんの腕を掴む。

愈史郎君の血鬼術の全てを知っている訳じゃないけれど、きっとあの言葉に間違いは無い。


「月陽」

「大丈夫。愈史郎君が、今手を貸してくれます」

「…分かった」


愈史郎君を義勇さんは知っている。
私の家族だと受け入れてくれたから、信じていると頷いてくれた。


「それと、」

「?」

「逢いたかった」


城が崩壊する瞬間、もう二度と離れないと両腕を回して呟けば小さな声で俺もだと言ってくれた。

再会を喜んだ。
だから後はもう、共に無惨を葬り去る為に意識を切り替える。


「倒しましょう、無惨を」

「勿論だ」


きっと悲鳴嶼様や不死川様も愈史郎君が此方へ誘導してくれるはず。

今日何度目かの浮遊感に見舞われながら、それでも今度は私を支えてくれるこの腕に包まれ地上へと戻った。
これが最後の戦い。

鬼による悲しい惨劇の夜は今日この日を持っておしまいにするんだ。
私達の手で、必ず。





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