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※冨岡さんと付き合う前のお話。モブ目線


今日も永恋さんは可愛い。
にこにこと愛嬌のいい彼女の笑顔は周りの人間を幸せにさせた。

それなのに鬼と退治した時の凛々しさは誰よりも美しいと俺は思う。


「今日は合同任務ですが、気を抜かずに必ず皆で生きて帰りましょう」


最近水柱へ弟子入りしただとか、継子になっただとか噂が立っているけど俺にはそんな事どうでもいい。

俺は口が上手い方だし、永恋さんより階級は一つ下だが実力だってそれなりにある。
顔だって負けてない、はず。


「永恋さん、どうもお久し振りです」

「あ、えっと…」

「園内です」

「あぁ、園内さん!こんにちは。今日はよろしく」


他の奴等がもたついているなら俺が先に永恋さんの隣を立候補してやる。
名前は覚えてもらってなかったけど、半年も前の任務だ。
そこは前向きに考えて行くしかない。

思い出したか思い出していないのかは分からないけど、可愛いから良しとする。


「柱候補の永恋さん程実力はないけど、頑張って付いていきます」

「いえいえ、私だってまだまだですから。お互い集中していきましょう」


挨拶代わりに手を差し出すとそっと柔らかい手が添えられて内心の俺はガッツポーズ。
見たかそこでもたついてる野郎共。

近付いたら分かったけど永恋さんすげぇ良い香りがするんだ。


「さて、行きますよ」


不意に日輪刀を抜いた永恋さんの刀身は透き通るような透明で凄く綺麗だった。
刀を地に立て瞳を閉じた彼女のなんと神々しい事か。


「月の呼吸…壱ノ型、睦月」


永恋さんの周りが脈を打つように一瞬光って、その大きく可愛い瞳を開いた。
俺達はその姿に目を奪われていると、それに気付いてもいない永恋さんは地に立てた日輪刀を抜いて鞘にしまった。


「ここより北に鬼の生体反応があります。行きますよ」

「はっ!」


俺達は永恋さんの指示に従い鬼のいる所へ向かった。
そこには教えてもらった通り、理性の欠片もない人を食う事だけを目標とした鬼が居る。

新人がその姿に小さい悲鳴を上げていたが俺は違う。
永恋さんに俺の勇姿を見てもらうまたとない機会だ。
腰に差していた日輪刀を抜き、その鬼と間合いを詰める。


「炎の呼吸っ!」

「参ノ型、弥生!」


刀身に炎が纏い始めた瞬間、横から異様に伸びた手が俺の視界に入りヤバイと目を瞑ると凛とした声が聞こえていつまでも来ない衝撃に瞼をゆっくり開けると永恋さんの背中が見えた。

腕を斬り落とされた鬼は叫びながら再びあの伸縮自在な腕を再生している。


「す、すいません」

「まずは相手の出方を見ましょう。大丈夫、私がついていますから」

「はいっ!」


死ぬ程恥ずかしいけど、俺を励ますように鬼に視線を向けたまま肩を叩いてくれた永恋さんは本当に天使だ。
もう一度日輪刀を構え直して、鬼の出方を伺う。

今回永恋さんは俺達の支援という名目で共に来ているからか、自分で鬼の頸取ろうとは仕掛けない。
鬼から与えられる攻撃を防ぎ、指揮を取っている。


「まずは厄介な腕を斬り落としなさい!頸はその後でいいです!私達は柱では無い。だからこそ頭で考え自分が如何に安定して頸を落とせるか考えて!」

「分かりました!」


俺じゃない隊士が鬼の腕を引きつけ、別の隊士達で両腕を狙う。
永恋さんの指揮通り鬼の両腕を切断する事に成功した俺達は其々が刀の軌道にぶつかり合わないよう呼吸を使って身体を切り刻んだ。

最後に頸を斬り落としたのは俺じゃなかったが、今までに無いくらいに呆気なく鬼を倒せた事に驚愕する者や喜んでいる者がいた。
その様子を少しだけ硬い表情のまま見つめる永恋さんの視線に気づかないまま。



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