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※冨岡視点


お館様から鬼を狩った帰り道に文が届いた。
伝令ではなく文とは何かあったのかと開いてみれば自分にとって喜ばしくない事が書かれていた。


【新たなる柱の候補、永恋月陽とともに行動し任に当たれ】


眉間を抑えため息が漏れた。
自分は他の柱と違い、継子を迎える気はないと言うことをお館様には事前にお伝えしておいた。

残念だ、と言われたが俺が柱となってしまった事を今でも自分が何より認めていない。
そんな俺が、新たな柱候補と共に行動しろとは何をお考えなのだろうか。

帰ったら抗議の文でも送ろうかと考えながら自宅へ帰ると、門に頭を預けた隊士が居た。

名前で何となく性別は分かっていたが、やはり女だったか。
しかしこの後ろ姿どこかで見た事がある。
音も無く後ろから声を掛けてやれば、気付いていたのか気付いていないのか背を向けたまま俺に用があると返事が返ってきた。

いい加減気付け。
こんな奴が本当に新しい柱候補でいいのか。




「冨岡は俺だが」



そう言えば驚いた顔で振り向いた女は何処かで見たことのある隊士だった。
誰だったかと慌てふためく目の前の隊士に記憶を辿っていると胸元で光る月の首飾りが目に入った。

確か一度だけ共に鬼を討伐しに行った記憶がある。
月の呼吸という今まで聞いたことのない呼吸を使う女だった。剣筋も良く、判断力もある。 
なかなかだと思ったのも記憶に新しい。



「入れ」



そう言った後何かを勝手に勘違いしていた永恋が一人で騒いでる間に俺は家の敷地を跨いだ。



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