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緊張した柱合会議も終わり、今夜は見回りの予定だけだったので少しだけ寄り道をして食材の買い物を済ませる。
冨岡さんが無言で鮭を指差すのでそればっかりではいけませんと言ったのがさっき。


「しかし最近は目まぐるしく色々なことがありますね。あ、じゃがいも4つください」


冨岡さんに少しでも栄養のある物を食べさせる為に頭の中で色々な献立を考えながら買い物をして行く。
私達はいつ長期の任務に出るか分からないから、買う時は少な目の調達で済ませる。


「鬼殺以外は基本的に穏やかに過ごしたいものですね。あと人参も3本ください。それと大根」

「…あぁ」

「冨岡さんは休日を鍛錬以外で過ごすとしたら何がしたいですか?」


八百屋でそれなりに食材も揃ったので、軽かった手提げ袋は少し重くなった。
休日という休日は私達にとってあってないような物だから完全にたらればの話ではあるが、折角鬼の居ない日中をのんびり会話してもいいと思う。

冨岡さんは私の方をちらりと見て手提げ袋を奪い取りながら思案するよう雲一つない空を見上げた。
筋力鍛錬として手提げ袋にしたのに、冨岡さんが持ってしまっては意味がないのだけどな。


「墓参りに行きたい」

「…墓参り、ですか」

「行けているのか」

「いえ、私もここ最近顔を出しに行けてないです」


父さんと母さんのお墓。
きちんとしたお寺に納骨させてもらっているけど、鬼殺隊という職種柄纏まった休みというものはなかなか取ることが出来ない。

鬼によって被害が出来る限り広まらぬよう任務のない日は見回りをして、鬼が出たとなれば何処へでも飛んでいく。


「その内、一緒に行くか」

「え、いいんですか?」


まさか一緒にと言われると思っていなかったので思わず驚きで声が大きめになるが冨岡さんは気に求めた様子もなく頷いてくれた。
何だかお墓参りに男性を連れて行くというのは故人相手でも少し恥ずかしい気もするが、嬉しいとも思える。


「何だかちょっと照れますね」

「月陽」

「はい!?」

「伊黒もお前を名前で呼んでいた。なら俺も呼ぶ」

「突然過ぎてちょっとついて行けないんですが、私はどちらでも構いませんよ」


突然下の名前で呼ばれて更に目を剥いた私は冨岡さんを凝視する。
どうした、何があったんだ。と言うか何故ここで伊黒様のお名前が上がるんだ。
別段不機嫌な様子も無ければどちらかと言うと言ってやったぞ感のある顔をしている気がする。

何だか可愛らしい冨岡さんに自然と笑みがこぼれた。


「でしたら私は義勇さんと呼んだほうがいいですかね?」

「!」

「なんて、冗談ですよ。流石に柱をお名前で呼ぶなんて恐れ多いです」

「いい」

「?」

「月陽なら構わない」


こちらを真っ直ぐ見つめて言うものだから、頬に熱が集まってきてしまう。
そんな顔で見つめないで欲しい。突然のお互い名前で呼び合うなんて恥ずかし過ぎて心臓に悪い。

羞恥心の限界に思わず手で顔を覆った。



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