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「ほらほら不死川さん、お館様の御前ですよ。少し落ち着いてください。それと冨岡さんはもう少し発言を考えてくださいね?」
胡蝶様さすがです!と内心拳を握った。悲鳴嶼様も涙を流しながら頷いている事から不死川様も舌打ちして下がってくれた。
「一つ質問があるのだがいいだろうか!」
「…え、私ですか?」
「そうだ!君は水柱の柱稽古不参加をどう思う?」
まさか私に会話が振られるとは思わず、煉獄様の大きな瞳に見つめられ固まってしまった。
それは、私が参加するべき話題なの?と思ってしまったが、興味深そうにこちらを見る親方様に発言をしなければならないことは確定している。
「そう、ですね。冨岡さん程の実力があるのに柱稽古をしないのは勿体無いとは思います」
「分かってンじゃねぇか女」
「ですが、それは冨岡さんの意思がなければ意味のない事なのではないでしょうか」
「では何故君は水柱の元にいるんだ?元は柱の全員で君を育てる予定であったはずだ」
「私は私の意思で冨岡さんに勝手に付いていきたいと思ったからです」
我ながら理由になってないと思う。
そんな事は分かってるけど、居心地がいいという理由を抜きにしても彼の側で成長したいと感じている自分が居るんだ。
ここで嘘を言っても仕方がないと正直に自分の気持ちを煉獄様に伝える。
「冨岡さんはなんと言いますか…言葉足らずな所もありますし、全体の面倒というより冨岡さんは背中を見せて育てるのではないかと思います」
「だから隊士の成長を放棄していいと?」
「違います、悲鳴嶼様。今の冨岡さんには自信が…」
「俺が悪ければそれでいい。月陽を責めるように質問するのはお門違いじゃないか」
「…冨岡さん」
柱全員の視線を受け、必死に問い掛けられる質問に答えていると静かに冨岡さんが口を開いた。
「何だ、庇い合いでもしてるつもりかぁ?」
「そんなつもりはない。だが永恋が悪い訳じゃない」
「義勇の言うとおりだよ、実弥」
「お館様…」
「義勇と月陽は私の命令で共に任務をこなしてもらってる。お互いの成長に繋がればと思っていたんだけど、そうして正解だったみたいだね」
冨岡さんと不死川様が不穏な空気になる中、鶴の一声を掛けてくれたのはお館様だった。
「義勇は鬼殺の実力も申し分ないし、言葉足らずな面を置いても指揮がきちんと取れている。ただ足りないのは月陽の言う通り本人の自信なんだ」
「……」
「実弥の言いたいことは分かる。義勇程の実力を他の子供たちに継がせないのはとても勿体無い。だけどね、人には向き不向きがあるんだ」
「お館様は冨岡に甘過ぎます!」
「私は実弥が人に教えるのが嫌だと言うならその意志を尊重するつもりでいるよ。勿論他の柱たちも一緒だ。ここにいる鬼殺隊は誰もが平等に私の可愛い子供達だからね」
穏やかな笑顔で、穏やかな声でそう言われては不死川様も言葉が出ないのか立ち上がっていた身体を膝立ちに体制を戻していた。
「でもね、義勇。いつかは君も参加しなくてはならない。分かるかな?」
「…はい」
「それならいい。さぁ、話を続けようか」
お館様によって口論は終わり、会議も少しして解散となった。
お館様が退室した後も私はその場に残り、今日話していた内容を頭の中で整理する。
やはり私は冨岡さんのそばを離れた方のがいいのだろうか。
そう思っていると背後から肩に手を置かれ振り向く。
「大丈夫ですか?月陽さん」
「胡蝶様…」
「あまり気にしてはいけませんよ。不死川さんも貴方を嫌ってあぁ言ったわけではありませんし」
私の肩を叩いてくれたのは胡蝶様だった。
優しい微笑みで私の側に腰を下ろしてくれる。
「そ、そうよ!月陽ちゃんは何も悪くないわ!」
「そうだ。全部アレが悪い」
「もう、伊黒さんたら!」
「しかしまぁお前の自己紹介には派手に笑わせて貰ったぜ!」
気付くと私の周りにはお話したことのある柱の方々が寄り添ってくれていた。
冨岡さんはその様子を少し離れた木の下で私達を見ている。
「よもや君が水柱をそこまで信頼していようとは驚きだった!」
「煉獄様」
「言葉をそのまま受け止めれば矛盾した内容ではあるが、君が水柱を信用している事はよく分かった!うむ、いい関係だ!」
意地の悪い質問をしたな、すまん!と私の頭を撫でてくれた煉獄様に眉を下げた。
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