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そして私は柱の皆さんが庭に1列に並んでる1つ後ろに膝をつきお館様を待った。
頭を下げ、さっきまでご挨拶を誰がするか柱の面々で話し合ったりじゃんけんをしていた風景を思い出し意外と可愛らしい人達なんだなと思い出し笑いを堪える。

もし私が月の呼吸を極めて柱になる事があるなら、あそこへ入りご挨拶争奪戦に交じることが出来るのだろうかと想像した。
冨岡さんはご挨拶争奪戦には参加していなかったけれど。


「やぁ、私の可愛い子供たち。また同じ面々とこうして柱合会議が出来た事をまず誇ろう」

「有り難き幸せです。今日はお日柄も良く、お館様もご健勝の程我々一同喜んでおります」

「ありがとう、しのぶ。今日はとても調子がいいんだ」


ご挨拶争奪戦に勝ったのはしのぶ様の様だ。
凛と涼やかな声が静かな庭に響き渡る。
それに微笑みながら答えて下さるお館様の声のなんたる安心感。

私は頭を下げながら微笑んだ。


「さて、会議の前に1つ言っておくことがあるんだけど察しのいい君たちならもう分かっているだろう。月陽、前に出て自己紹介を」

「ひゃあい!?」

「ぶふっ」


いきなり私に振られるとは思っていなかった故におかしな声が出てしまった。
いや、今誰か笑ったな。

誰が笑ったのか突き止めてやりたかったが、お館様に呼ばれてしまっては指示に従うしかない。
あまね様にも小さく微笑まれ柱の方々より少し前に出て背筋を伸ばし正座する。


「緊張すること無いから安心していいよ月陽」

「は、はい…初めまして皆様。階級を甲、呼吸を月の型を使っております永恋月陽と申します。ご存知の方がいらっしゃるとは思いますが柱候補として水柱様の元で修行をさせていただいてます。いつか皆様とのお館様ご挨拶争奪戦に参加したいと思って精進する所存。どうかよろしくお願い申し上げます」


出来る限り短く丁寧に自己紹介を済ませ、地に出をつき頭を下げた。
ふと自分が言ったことを頭の中で繰り返す。
あれ、変な事言ったな自分と思って思わず勢い良く顔を上げると笑いを堪える柱の面々の肩が震えていた。


「ほう。私が来る前にそんな可愛い事をしていたのか。嬉しいね」

「あーっ!」

「っはははは!お前ほんっと派手に面白え奴だな!」


宇髄様の笑い声が響き渡り、やってしまったと冨岡さんを見たら呆れていると言うより呆気にとられた表情でこちらを見ている。
すみません、恥をかかせてしまった。とりあえず地に平伏すようにもう一度謝っておいた。

甘露寺様は笑い堪えていたけど伊黒様はドン引きした顔で私を見ていた気がする。


「いい自己紹介だったよ、月陽。ありがとう」

「い、いえ…」

「さて、今自己紹介してもらったように今回の柱合会議には将来的な勉強として月陽にも参加してもらうつもりだ。反対の子は居るかな?」

「い、いえ…私は賛成です」


胡蝶様まで笑ってるー!
厳格な雰囲気を壊してしまった自分を後で責めることにして一度先程座っていた後方へと下がっておく。

今回見学させてもらえるのは親方様のご厚意であり、他の柱の方々と顔を合わせる機会になっただけ有り難い。
初めましての方々からしたら第一印象は最悪そうだけど。


柱合会議では各々の近況と、今の隊士に対する評価を話し合っていた。
咳払い一つで私が緩ませてしまった雰囲気を持ち直す悲鳴嶼様は流石だと思う。本当申し訳ありません。

兎に角、現隊士達の質の向上を主に皆さんで語っていた。
最終選別を通過したとて鬼に仲間や自分が食われる恐怖で動けなくなってしまう隊士はそう少なくない。
柱稽古と言うものに何故か毎度参加出来ない私はその内容の変更や最終的な目標を話し合う。

柱稽古をしない冨岡さんはただぼうと聞いていた感じはあったけど、そこで不死川様が冨岡さんに指摘をしていた。


「冨岡テメェはどう思うんだァ?」

「…」

「柱のくせに柱稽古をしねぇとは自分とその阿呆の事しか考えてねぇのと変わりないだろうが」

「永恋は俺に同行しているだけで稽古はつけていない」

「アァ!?」

「俺がやる必要はない」

「テメェ、何言ってるか自分で分かってンだろうな!」


何というか、あまり話の進まない会合だなと率直に思った。
冨岡さんはきっと自分にその資格はないと言いたいのだろうけど、誰もが察する事なんて無理なのだからもう少し言葉を付け加えたらいいのにと思う。

ここで私が付け加えてもいいのだろうが、不死川様の様子では火に油を注ぎそうだから黙っておく。
流石に親方様の御前で喧嘩にはならないだろう。





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