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夕方、一応冨岡さんの元へ顔を出し任務について話した。
昼間の男性の件も含めて。


「一人での任務は久し振りなので緊張しますね」

「その男の事も気になる。気を抜くな」

「ありがとうございます。では」

「…永恋」


それなりにきちんと休息を取っている冨岡さんも見れたしそろそろ任務に向かおうと立ち上がった私を呼び掛ける声に動きを止める。


「何でしょう?」

「…いや、気をつけて行け」

「承知しました」


何か言いたげであった冨岡さんの話は聞いてあげたかったが待っていたら鬼が動き出す時間になってしまうので追求せずに今度こそ立ち上がって部屋を後にする。


「あら、鬼狩り様」

「蒼乃さん」

「任務ですか?」

「えぇ。遅くなると思いますので今夜は夕餉も風呂も大丈夫です」

「かしこまりました。お気を付けていってらっしゃいませ」


あれから蒼乃さんにも敵視されるような視線も感じなくなり、普通のやり取りをして藤の家を出た。
とりあえず二人の事は置いておけばいつか終わるし、私は鬼に集中しなくてはいけない。

気合を入れるようによし、と独り言を呟いて男性から聞いた鬼の出た道を目指す。


「貴方は…」

「鬼狩り様!」

「どうしてここへ来たのですか」


道の端にある大きな石の上に座っていたのは朝方に会った男性だった。
せっかく宿代も出してあげたと言うのに、やはり何かおかしい。


「い、いえ…話忘れていた事がありまして」

「話忘れとは?」

「鬼はおなごの恰好をしております」

「…それだけ?」

「えっ?!」


鬼かどうかを性別で判断していない私達にはその情報は必要ではない。
気配で分かるし、見た目的にも鬼の特徴は粗方出ているのだ。余程の鬼でなければ見抜けない事もない。

私の態度に心底驚いた仕草をした男性に首を傾げる。


「お、鬼狩り様はそんなにお強いので?」

「鬼殺隊では甲の階級を頂いております。ですので少しはお役に立つつもりですよ」

「そう、ですか…」


私の言葉に徐々に顔を青ざめていく男性に疑いは更に深くなる。本来上の階級を名乗ればある程度安堵に満ちた顔になると言うのにこの男は真逆だ。
しかし鬼の気配もしなければ、襲い掛かってくる様子もない。

鬼の手下かとも思うがこの男が人として生きている以上確信はないが気をつけたほうが良さそう。
常に刀に手を置き辺りの気配を探りながら街に向かう道を歩く。
段々日も落ち、暗くなってきた頃いつまでも後ろをついてくる男性へ声を掛けた。


「もう言いたいことは言ったのでしょう。宿へお帰りください」

「でも…」

「これ以上は鬼殺の邪魔です。それでもついてくると言うのなら貴方を鬼の手引をしている者と判断しますよ」


刀を抜き切っ先を男性の首筋に向け睨みつける。
余りやりたくは無いがこれ以上怪しい行動を取られては困ると判断せざるおえないのだ。
初めて刀を向けられたのか、男性はゆっくりと後退り私から離れていく。


「お豊!」

「っ、」

「よくやった父上!」


目の前の男性が名前を呼んだ瞬間脇にある草むらから鬼が飛び出してきた。
兎に角今の合図で男が協力者だと分かった。鬼の一撃を避け、すれ違いざまに一太刀浴びせて片腕を切り落とす。

まだ鬼となって浅いのか、絶叫をしてのたうち回る鬼に駆け寄る男は父と呼ばれていた。
そうか、あの鬼は男にとっての娘。夜な夜な人を導き誘導させ食わせていたんだろう。


「貴方達は何人殺したんですか」

「しっ、仕方ねぇだろ!娘が苦しんでるのに放っておける親が居るか!」

「イタイ…痛イよ、父上ェ!!」

「貴方の気持ちは分からなくもない。しかし他人を傷つけていい訳じゃない。申し訳ないですが、討ち取らせて頂きます」


呼吸を整え地を蹴って鬼へ勢い良く詰め寄った。



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