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それから私はたくさんの任務を冨岡さんと一緒にこなした。
一つの季節が終わる頃、お館様からお呼び出しを受け私一人で本拠地へ歩いている。
「冨岡さんは別って何の話だろう」
久し振りに冨岡さんと離れての任務なのだろうか。だとするとわざわざ呼び出される意味とは何なのだろう。
のんびり考え事をしながら長閑な田舎道を歩いている。
もう直ぐ着くし、隊服の裾を伸ばして少しでもお見苦しくないよう服装を正す。
私の隊服は冨岡さんと違って女性専用の隊服を着ている。
一度だけ冨岡さんに下着が見えそうだと言われたけど、そういう事気にする人何だ程度に思ったけどなかなか珍しい事を言ってたんじゃないだろうかと思い出し笑いしてしまった。
私ただの変人じゃないか。
「もし一人の任務なら久し振りだから緊張するね、かー君」
「黙ッテ歩ケ」
「うーん冷たい」
かー君は相変わらず冷たい。
この子のお陰で冨岡さんへの耐性がついてたのかもって思う。
ふと、道中冨岡さんとの事ばかり考えているような気がして空を見上げた。
「あーぁ。冨岡さん大丈夫かな」
彼は今日一日非番だと言っていたから、きっと家で日輪刀の手入れでもしてるのかな。
ご飯はちゃんと食べるだろうか。一応おにぎりと冷めても美味しく食べれるように煮物等は用意してきた。
そんな事を考えて歩いていたらもう目の前には屋敷の扉が。
見張りの隊士の人に名前を告げて中へ入れてもらう。一人でお館様にご挨拶できるかと緊張してきた。
室内に通された私は正座してお館様を待つ。
「やぁ、月陽。元気そうで何よりだ」
「お、お久しぶりでございます!お陰様で日々任務を全うさせていただいております」
「そう緊張しなくていい」
あまね様に支えられお館様が顔を出し、膝を立てて頭を垂れていると楽にしていいと言われた。
そのまま楽にする事もできる訳がなく、再び正座をしてお館様のお言葉を待つ。
あまね様は今日もお美しいな。お二人揃うと神々しいものがある。
「今日は月陽に直接聞いておきたいことがあるんだ」
「は、はい!」
「月陽、そろそろ柱にならないかい?君はもう50以上の鬼を倒している。周りにも君を推薦する子供たちの声は私の耳にも届いているよ」
お館様の言葉に、私は答えることが出来ない。
責任ある立場になりたくないからと駄々をこねたい訳ではないけど、今の私に柱を名乗る資格があるとは思えないのだ。
「し、しかしお館様。私はまだ自分の呼吸を使いこなせておりません」
「使いこなせていないとは?」
「お館様、あまね様。お恥ずかしい話ではありますが私はまだ自分の扱う呼吸というもの自体何も分かっておらぬのです」
私が使えるのは10個の型だけ。
月の呼吸は12個、要は12月分の型があるということだけしか分かっていない。
期待をしてくれているお館様には申し訳ないが、私にそんな資格がないのだ。
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