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お互いがお互いに衝突し合うような形で斬り合うが、私のが少し早かったお陰でこちらは無傷である。

技の出が早いし、今までの疲労感に比べたら全く違う。
ひらりと頭金についた飾りが揺れる。


「さすが柱級の任務。強い敵ばっかりだね!」

「アガッ」

「冨岡さん!」

「月陽、頭を下げろ」

「!」


衝突した鬼が私に頸を落とされ崩れ行く身体を踏み台にして冨岡さんが飛び上がっている。


「肆ノ型 打ち潮」


流れるような動きで私が庇っていた筈の女性の頸を落とした。
驚き振り返れば顎が外れて口から鬼の顔が出ている。

寄生型だったのか、と思ったと同時に冨岡さんの無駄のない動きに目を奪われた。


「綺麗…」


ふと、修行をした山の川の動きを思い出した。
体制を変え、寄生した女性の体から飛び出た鬼に追撃を放つよう片脚に力を込め飛び込む。


「陸ノ型、水無月」


冨岡さんが放った打ち潮の残りの水流の外側から三日月の形に斬撃を繰り出した。
それは小さな鬼の脚と頸を斬り落とし、鳴き声のような雄叫びを上げながら鬼は消滅する。

凪いだ水面に浮かぶ月の如く静かな風景を思い浮かべた。そうしたら自然と型が出来上がって…
しかも新しい型を打ったというのに疲れもない自分に驚きを隠せなかった。


「疲れない…」

「今のは?」

「え!あ、何か冨岡さんの姿を見てたら自然と体が動いてて…」


納刀しながらてちてちこちらへ歩いてくる。
この人の足音は戦闘時以外可愛らしい音を立てるなと思いながら、先程放った水無月について答えた。
自分でもいつも分からないのである。今までだって突然会得した型が殆どだ。
ただ景色を思い浮かべ、体が動くままに刀を振るって居るだけなのだから。


「ふと思ったんですけど、月の呼吸って水の呼吸の派生なんでしょうか」

「さぁな」

「うーん、決まった型がないからなかなか…」


私が頭を抱えて唸っていると隠の人達が到着したようだ。
うわっ、と声が出てるのは恐らくさっきの女性の生首を見たからだと思う。
あれはなかなかえげつないものだと処理する人達に同情の目を向けた。


「あ、永恋さんでしたか」

「お疲れ様ですー」

「隊服着ていなかったので誰かと思いました」

「へへ」

隠の方々とは後処理の引き継ぎで話す事が多く、名前は覚えていないけど声で何となく見分けが付くくらいには仲良くしていた。



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